赤いリボンの猫[完結] | ナノ


部活を終え、自主練を始めた黒尾たちに研磨が背を向けた瞬間、声をかける。



『おい、研磨ー。トス上げてくれー』

「…。」



そのまま聞こえていないかのようにスタスタ体育館の出口に向かって歩いていく研磨に驚いた名前は彼を追いかけた。

体育館を出て少ししたところで研磨を呼び止めた。



「研磨っ」

「…。」



名前の声に足を止める研磨。
しかし、返事はない。

いつも、何?と振り返ってもくれる研磨が、この時は確実に違っていた。


「…どうかした?」


名前の問いかけに『別に…』といつもより素っ気なく返事をした研磨。
名前はある提案を持ちかけた。



「ねぇ、研磨。」



研磨はその声に振り返った。



「ちょっと話しよう?二人で。」



そう笑顔で言われてしまっては、断れない研磨は「どこで?」と承諾とも言える問いかけをした。



名前は体育館の横で研磨と隣り合わせに座った。



「やっぱり、まだ夜は寒いね…」


と言って身震いをする彼女を見て研磨は「名前がここにしようって言ったんじゃん。」と言う。


う…と言葉に詰まる名前に、研磨は手にしていたジャージを手渡した。



「え…いいよっ研磨も寒いでしょ?それでなくてもいつも寒いって言うのに…」

「ううん。動いてたから、まだ暑い。」


「だから着なよ。」と名前に手渡した。
その優しい行動に、胸が高鳴りを増す。

真っ赤なジャージを広げて見る。

“NEKOMA”と白い文字を見てボーっとする。



「なんで、黒尾先輩のこと無視したの?」

「…直球すぎ…。」

「ごめん。遠回しな言い方できないんだよね…。」


ジャージに腕を通した名前は、やっぱりちょっと研磨のほうが大きい…と感じながら彼の言葉を聞いた。


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