赤いリボンの猫[完結] | ナノ

観察


『なぁ、名前よ。』

「はい…?」


山本の鼻血を止め終わった時、名前の元へ歩み寄った黒尾。
振り返った名前をじーっと見つめる。


名前は嫌な顔をした。



「黒尾先輩…あまり見下さないでほしいんですけど…」

『名前って研磨より背低いよな?』



黒尾が思いついたように問いかける。
彼女は「あー…」と研磨の姿を視界に入れる。



「そうですね…私162cmなんで…研磨のほうが高いです。」

『162cm…』



黒尾の呟きを聞き不思議に思った彼女は彼を見上げてその顔を見た。
その瞬間、ニヤッと笑うなり『ちっせぇなぁ。』と一言言って彼女の頭をポンポンと叩く。



「ちっさくないです!確かにバレー部に混じったらちっさく見えますが…」

「でも、それがよかったり…」と少し頬を赤くして笑う名前を見て、不覚にもときめいた黒尾はすぐ手を離した。



そりゃ、好きになるわ…と研磨の気持ちを納得した。



「女子の中だと、背が高い方なので…あまり女の子に見られないみたいで…」と黒尾に相談する名前。



『そりゃ、ちげぇだろ。』


「え?」と首を傾げた彼女に黒尾は口角を上げた。



『可愛すぎんだろ?』

「っ…なっ」



素直に答えを言っただけなのに、顔を真っ赤にする名前に、黒尾も『え?』と戸惑う。

どうやら、これくらい聞きなれてるだろう程度に考えていたようだ。


だが、彼女の反応はどうみたって言われてきた女の子の反応ではなかった。



『まさかと思うけど…あんまり、言われたことねぇの?』

「まさかってなんですか…そんなこと平然と言う男の子の方が少ないですよ…」


あまり顔を見られたくないのかフイッと横へ向けた名前。


「この前、研磨にも言われました…バレー部員はみんなそうなんですか?」


名前の視線の先は、研磨を捕らえていた。
夜久のレシーブ指導を隣で聞いている研磨は、何を考えているのかわからない、いつも通り、無表情な顔をして立っていた。


『うち(バレー部員)はみんな女に免疫持った奴がいねぇからな…扱い方がよくわからないってのもある。』


そんなことを言いながら、黒尾は心の中で『研磨がねぇ…』と彼の意外な言葉に内心驚いていた。


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