赤いリボンの猫[完結] | ナノ

ヤキモチ


『お前、名前のこと好きだろ。』

「っ…」



2回目の休憩の時、黒尾が小さい声で研磨に問いかけた。
研磨は飲んでいたドリンクを飲むのをやめて黒尾に「…なんでそう思うの。」と問いかける。

それに、ニヤニヤしはじめた黒尾は研磨の肩をとった。



『さっきの…アレ。』



それだけで思い出されるのは突然、研磨が名前の腕を掴んだことだ。



「だから…なに?」


『恍けるなよ?あれはお前、山本にヤキモチ焼いたからだろ。』と耳打ちする黒尾。

研磨はいつもなら眉間にシワを寄せるところだが、きょうはいつもと違った。



「そう…かな?」

『え?』

「なんか、この頃、わからない。」


その発言に、黒尾は研磨の肩から回した腕を戻した。
ふざけてる場合じゃない…研磨は真剣に悩んでるんだ、と黒尾はわかった。

研磨はドリンクを口にする。



『もう、誰とも話さず俺とだけ話せばいいのに、って思う?』

「…思っても言えないよ、そんなこと。」



「マネージャーだしね。」とボトルを壁際に置いた研磨。

黒尾は研磨の言葉から考える。


マネージャーだから、思っても言えないよ…ってことは、思うことはあるんだな。

でもそれを、言えない。


まぁ、確かにマネージャーと部員の立場だからな…
付き合えたとしても、それは言えねぇよな…。

難しい…男の心境だな。


でも、つまりは…


『やっぱり、好きなんだろ?名前のこと。』


じゃねぇと、独占欲なんて出てこねぇだろう?


黒尾の問いかけに、研磨は「クロがそう言うなら…そうなのかもしれない。」と遠まわしでだが認めた。


その瞬間、黒尾は名前の観察を始めた。


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