紅白戦
試合が開始されたものの、音駒高校の特徴である粘り強い戦いでなかなか得点が重ならない。
得点が入る時というのは、春入ったばかりの1年生のレシーブが甘かったり、黒尾のブロックによる得点だったりと限られている。
そんな中、名前の視線の先はセッターである研磨を捉えていた。
チームメンバーのレシーブがうまく研磨はあまり身動きしなくていい、しかし、たまに落とすまいとレシーブに飛びかかる姿を見ればドキリとする。
あの、ゲームしてる研磨が…バレーをしてるときは生き生きしてるように見える。
そして、よく動く…。
もちろん、ゲームをしているときも生き生きしているのだが、名前はどこか寂しい気持ちを抱えていた。
…なんだろ。モヤモヤする。
紅白戦を終えたバレー部員たちは汗をかき、乱れた呼吸を整えるべく、ドリンクとタオルを名前から受け取る。
山本に「山本さんスパイクカッコいいですね!」と名前が言ったのを聞き、山本は疲れなんて何処へやら、目を輝かせキメ顔をした。
『名前さんに言われると、やる気が10倍…いや、100倍になって出てきます!!』
名前が微笑むと、その微笑みに山本はタラッと鼻血を流した。
山本の隣にいた夜久がギョッとして山本の手にしているタオルを奪い、顔面に押し当てる。
「今、ティッシュ取ってきますね。」
『おう。頼む。』
『お前、マネージャーに笑顔向けられたくらいでなんだよ…情けねぇなぁ。』と夜久の声を背後にティッシュを取りに駆けてく名前。
そんな彼女の腕を、何を思ったのか研磨が掴んだ。
振り返った名前と、研磨の隣にいた黒尾が戸惑いの顔をみせる。
「ゴメン…何でもない。」
掴んだ直後、我に返ったかのように手を離した研磨は、名前に謝るとその場を去るように練習する1年生の元へ向かっていった。
その姿を見ながら、固まる名前に対し黒尾は何か得たような表情をしていた。
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