赤いリボンの猫[完結] | ナノ

井上先生


『名前ちゃーん。』


体育館、1年生が準備を終えた後、背後から名前を呼ばれた。
この呼び方をするのは、黒尾しかいないと振り返った名前は「はい?」と首を傾げた。



『担任、井上なんだな。』

「?そうですけど…」

『お陰で井上に目ぇつけられたわ。』


『授業中、研磨と名前見てたらバレた。』と話す黒尾についていく名前は彼の背に向かって「見るならバレないようにしないとダメです!」と言う。


ぴたっと足を止めた黒尾が振り返るなり『お前は、研磨と似たようなことを言うんだな…』と笑みを見せる。


首を傾げ、「研磨はなんて言ったんですか?」と聞く名前に黒尾はゼッケンを手渡しながら答えた。



『見るなら言ってよ…、だとさ。』



『その上、黙ってるなんて性格悪い。とまで言われたんだぜ。それじゃ面白くねぇだろってな?』と楽しそうに話す黒尾。


名前は手渡されたゼッケンを見ながら「そうですね…」と返した。



黒尾と研磨は、幼なじみで仲が良い。
もちろん、みんなが知らないことを2人はお互い同じ程知っている。


その仲に、羨ましく思う気持ちが、今の彼女の中にあった。


『東北遠征を目前にきょうは紅白戦を行う。』


猫又監督が部員に説明する。
メンバーの名前が呼ばれるごとに名前がゼッケンを配る。



『じゃあ、始めようか。』


猫又監督のその合図とともに試合が開始された。


『黒尾さんと研磨さんが一緒ってズルイです!』


リエーフが外野からそう叫ぶ。


「…何言ってんの…あっちの方が絶対有利でしょ…」


研磨たちに対するチームにはリベロの夜久とアタッカーの山本がいた。


『でも、誰がトス上げるんすか?』とリエーフ。
「夜久くん。」と研磨が言う。


コートの中で会話をした後、直井コーチのホイッスルが響いた。



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