赤いリボンの猫[完結] | ナノ

男子の会話


3時間目の授業、黒尾と夜久の3年5組では2年4組の担任である井上先生の授業を受けていた。

窓際の席の黒尾は窓の外、グラウンドで体育の授業をしている2年の生徒たちの姿を、その中でも目立つプリンヘッドの研磨と、マネージャーになったばかりの名前の姿を見ていた。


名前は50mのタイムを測っているようで、順番を待っているのか友達と座って和気あいあいとしている。


研磨は研磨でバレない程度にサボりながらも頑張っていた。


そんな研磨を見て呆れていた黒尾に井上先生の鋭い観察眼が向けられた。



『黒尾。何見てるんだ?』

『うおっ…びっくりするだろ、井上先生よ。』



黒尾の知らない間に隣に来て、窓の外を見る井上先生。



『お、うちのクラスの奴らだ。そうか、この時間体育なのか。』

『え、井上先生のクラス?どっち?』



井上先生の話に黒尾がもう一度窓の外を見て問いかける。



『どっち…って、うちのクラス男子バレー部いないぞ?…あ。』



教卓の方へ歩いていた井上先生は思い出したように振り返ると、呆れた顔を黒尾に向けた。



『苗字か、お前の視線の先は。』

『げ…井上先生、名前のクラス持ってんの?研磨のクラス持ってて欲しかったわ。』

『どういう意味だ。』


『まぁ、いい。授業止めてすまなかったな。』とクラスに井上先生が謝罪すると、授業が再開した。

黒尾もそれを機に授業に集中した。



そんな頃、グラウンドで体育の授業を受けている研磨の周りでは男子トークが繰り広げられていた。



『苗字、今日も可愛い…』

『俺、同じクラスじゃなかったけど…体育してる姿を間近で見れるクラスでよかった。』

『ってか、4組は顔面偏差値が高い。』

『確かに。』

『まぁ…男子もだけどな。』



そう言って彼らの視線は4組である望月の姿を捕らえる。

研磨は興味なさげにその場に座り込んだ。



「あ、研磨っ」

「…。」

「こんなとこで座って…いいの?怒られるよ?」



座り込む研磨の隣に腰を下ろしたのは、先ほど自分の周りにいた男子の話題となっていた、名前の姿だった。

間近に来た彼女を見て、先ほど彼らの話していたことを思い出した。



顔面偏差値、高い…。



ジッと見られる名前は、ふいっと研磨から視線を逸らした。



「み、見すぎ…何か変?」

「あ…ごめん。」



そう言うと視線を逸らした研磨。
名前は首を傾げた。



「研磨、元気ない?」

「いつも通りだけど…」

「そう?」



研磨の近くに立っている男子たちがちらちらとこちらを見ているので、気になった名前が視線を向けた。

その瞬間、彼らは頬を赤くしその場から少し離れていく。



「さっき、名前の話してたよ。」

「えっ…悪口?」


[ 28 / 110 ]
prev | list | next

しおりを挟む