赤いリボンの猫[完結] | ナノ

いいよ


部活中、研磨はいつもと変わらないように名前の目には写っていた。
でも、彼女の心の中には一つの疑問が解決されていないままだ。


スッキリしない気持ちをいつまでも持っておくわけには行かなかった。



「研磨。」



片付けをしているとき、やっと研磨を捕まえることができた名前。

研磨の腕を無言でつかみ、体育館を出た。



「どうかした?」



心配そうな声色で、問いかける研磨。
相変わらず掴んだままの研磨の腕。
少し、力を入れた。



「お昼休みの…質問のことなんだけど…」

「…あぁ…。」


研磨は視線を彼女へ向けた。


「いないよ。」


はっきり、そう言った名前。

研磨は「でも…」と話を続ける。


「あの…バスケ部の人。」

「?望月?」

「あの人は…名前のこと。」


好きだよ、そう思う研磨とは裏腹に、名前は言う。


「…私は、1年のときから望月と仲いいんだけど…望月をそういう目で見たことも考えたこともない。」


「仲のいい友達でいたいと思ってるんだ…。」と微笑む名前に、研磨は「そっか…」とだけ言い、視線を落とした。

話が終わり、二人で体育館へ入って行く。



「ねぇ、研磨。」

「なに?」

「研磨、笑うと可愛いよね。」

「……。なに、それ。嬉しくない。」


眉間にシワを寄せたいつもの研磨の姿。
名前は、ふふっと笑った。


「でも…」と研磨が口を開く。
それに名前は耳を傾けた。


「名前は、いいよ。」

「え。」


不意を付かれた研磨の言葉に、足を止めたとき


『苗字ーそのへんのボールしまってくれー』

「あ、はい!」



夜久の声で研磨と離れたが、名前は先ほど言われた言葉を脳内でリピートしていた。


どうしよ…おかしい。
いつからこんなに乙女になったんだ、私。


名前は一人ボールを拾いながら葛藤していた。


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