赤いリボンの猫[完結] | ナノ

知り合う


「うーん…」

『おい、苗字ー机動かせ。そして部活じゃないのか?お前。』


担任の井上先生が彼女の目の前に立ちはだかる。
ボーっとしたままの視線を先生に上げると、はっとしたように彼女は立ち上がり教室をバタバタと出て行った。

井上先生は『仕方ないな…。』と彼女の机を後ろへ引いた。



名前は部活に行けば研磨に会える、悩んでる暇があったら会って本人に聞いた方が早いに決まっている、と思い更衣室へ駆けて行った。


着替えを済ませ、いつも通り体育館へ向かったが、中では聞きなれないボールの音がする。


覗き込むと、バレー部員の姿はなく、かなり雰囲気の違う男子バスケ部がいた。



あれ…?今日部活…あるよね?



悩みながらその場を動けずにいると、背後から声をかけられた。



『あれ、苗字?』

「あっ望月っちょうどよかった!今日バスケ部が体育館使うの?」



バスケ部のスタイルでタオルとボトルを片手に現れたクラスメイトの望月。
名前はとりあえずバスケ部の彼に確かめる。



『おう。今週土曜試合なんだよ。だから、週の半分借りることになってるけど…聞いてなかったのか?』

「そうなんだ…。聞いてない。」


ということは、第二体育館かな?休み?なわけない…よね。
と、考えているところへ声をかけるバレー部員がいた。



「名前?」

「!!研磨っ」



この声…と救いの神が現れたの如く振り返った彼女は、目の前にいる人物を確認して満面の笑みを見せた。



「何してるの?」

「よかったー。部活あるよね?」

「うん…ある、と思う…けど…」



研磨は名前の背後にいた望月を見た。
ペコッと頭を下げた望月に、名前が「あ、彼、同じクラスの望月。」と研磨に紹介する。

その名前を聞いた研磨は視線を逸らし「どうも。」とだけ言う様子を見た名前が首を傾げる。



『孤爪、だよな。』

「…。」



研磨に歩み寄る望月。
研磨は無言で彼を見つめた。

その二人の空気に違和感を感じた名前は戸惑う。



えっと…?



『苗字と一緒に帰ったって本当?』

「ん?」



なんで、そんなこと…朝、私、うんって言ったのに…。
視線をフイッと逸らした研磨。


「名前は、物じゃないよ。」


その研磨の言葉もまた、よくわからないものだった。
仲介に入ろうとしたところ、肩に手を置かれた。



『うちの、セッターとマネージャーが何か、ご無礼を?』


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