赤いリボンの猫[完結] | ナノ

帰り道


着替えを終え、部室を出ると携帯を手に待っていた研磨の姿を見つけ、駆け寄る名前。

そして、手にしたジャージを彼へ手渡す。


「ごめん、さっき渡せばよかったね…。」

「いいよ。きのう、持って帰られたし…。」


昨日、持って帰ると言った研磨に対し、マネージャーの話ですっかり気をそちらへ向けた名前に少し不服だったようだ。



「あぁでもしないと孤爪くん意地でも持って帰りそうだったじゃん…」

「…まぁ。」


研磨は渡されたジャージを鞄へ入れると門へ向かって歩き出した。
その背を追うように歩く名前に「なんで後ろ?」と研磨が振り返った。



「いや…隣歩くのは何か申し訳ない気が…」

「意味わかんない…」


そう言って微笑んだ研磨。
その表情に、戸惑う名前。



「だ、だから…」

「いーから、横来なよ。」

「…。」



そう言うだけ言って歩き始めた研磨。

名前は先ほどから心の中で戸惑いを見せていた。


え、え?
突然のことすぎて、頭と体がついていけてない…。


思っていた印象と違いすぎていたため、素直な気持ちを受け入れることができていない彼女。



「孤爪くんって…」

「研磨。」

「え?」

「って、みんなから呼ばれてるから…何か違和感がある。」

「あぁ…」


納得…。と思った彼女だったが、その直後、再び心の中が乱れ始めた。


ん?つまり…名前で呼べって言われた?


確かに思い出してみると、バレー部のみんなが研磨、と名前で呼び、苗字で呼ぶ人は一人もいなかった。


研磨といると心が休まらない、とこの短時間で彼女は自覚した。


無自覚でやってるんだよね?

そして女子なら私じゃなくても、ドキドキするシチュエーションばかりだったよね?


なんて誰かに問いかけながら、彼女は自分で頷き、変に考えないように必死だった。


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