決断
『『おつかれしたぁ!』』
外はすっかり真っ暗になっている。
体育館では自主練に残っている部員がちらほらいる。
黒尾もその中の一人だった。
「黒尾先輩。」
『おう。』
「ちょっといいですか。」
名前に呼ばれた黒尾は部員から離れたところへ向かった。
『きのう、研磨に言われたことか?』
「…はい。」
名前は昨日研磨に言われたことが、まさか黒尾に伝わっていたなんて思っていなかったため、少し驚いた。
しかし、それならば話が早い。
名前は頷いた。
「昨日、言われた後から、今日部活始まるまでにずっと考えて出た答えは、“毎日、バレー部に関わることになるなら、せめて楽しみたい”ってことでした。楽しめれば、好きなことできなくったって、悔いはないなと思って…。」
黒尾に話す名前の視線は真っすぐ残って練習する部員たちに向けられていた。
「昨日は、初めて会った人たちだったし、あまり会話もできませんでした。でも、きょう、みなさんのほうからたくさん声かけてもらって…確信しました。ここでなら、高校生活悔いなく過ごせるって。」
『へぇー。それは良かった。』
黒尾の短い返事に、笑顔を向ける彼女。
「部の雰囲気もいい、すぐ馴染めるとは思ってませんが…私も一緒に戦って行きたいです。」
「それに…」と黒尾を見上げる名前。
黒尾は不覚にも心鳴らせ、少し戸惑った。
「せっかく主将に誘ってもらったので、ムダにはしたくないと思ってはいましたが…結果的にムダにしなくてよかったです!」
と満面の笑み。
彼女のこの笑みに、男は誰もが心惹かれるだろう。
『そ、そうか。』と視線を思いっきり逸らした黒尾を変に思いながらも、名前はペコリと頭を下げた。
「明日から、よろしくお願いします。主将。」
『おう。こちらこそ…手、かかるだろうけど…頼むな。』
名前に笑みを向ける黒尾。
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