赤いリボンの猫[完結] | ナノ

部の素顔


『よし、じゃあスパイクの練習するぞー』


直井コーチの指示の元スパイク練習に入った部員たち。

セッターの研磨とリベロの夜久がトスを上げる。
研磨が「名前。」とコーチの隣に立っていた彼女に声をかけて手招きをした。


「俺に、山成のボールちょうだい。」

「う、うまくできるかな…」

「大丈夫、触れたらいいから。」


研磨の心強い言葉につられて、うん、と頷いた名前はボールを手にした。
スパイカーは山本。


『お?なになにっ名前さんが投げてくれるんっすか?ありがたいっす!』

「虎…大袈裟。」


山本は名前と同じ学年だというのになぜか敬語。
そして、ワクワクした顔を彼女に向ける。


「…いいよ、投げて。」


名前が彼にどういう返事をすればいいのか困っていたところに、研磨が声をかけた。

「はい!」と返事をすると、山成のボールを投げた名前。

上出来と言ってもいい見事な山成のボールが研磨の手元に届く。



『うっしゃー!』と高く跳び万全のスパイク態勢に入っている山本。


研磨はトスを放つ構えをしていたが、ボールをその手でキャッチした。
そう、上げることなく…。


「え?」

『!!おい、研磨ぁ!』


スパイクを打つことなく着地した山本は左隣にいた研磨に向かって喰ってかかる。
しかし、研磨はいつも通りの涼しい顔で「ごめん、距離感わからなくなった。」と言った。


いつもではあり得ないようなことを口にした研磨に山本はご立腹だ。

自分のかっこいい姿を名前に見せれる一打を逃したのだから。



『嘘をつくんじゃねぇおーまーえっ!』

『山本、お前、研磨に怒らせるようなことしたんじゃねぇか?』

『え?』


夜久がトスを上げる列にいた黒尾にそう言われキョトンとする山本。

黒尾は研磨にニヤッと笑う。
研磨はその視線から逃れるようにふいっと視線を逸らした。


『えー…しましたかね?』

『よーく考えるんだな。さっさと次回せー。』


黒尾のお陰で練習が再開された。
山本は首を傾げながら研磨とのやり取りを思い出していた。


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