赤いリボンの猫[完結] | ナノ

マネージャー


放課後、今回はしっかり体操服に着替えて来た名前。
手には研磨のジャージを持っている。

堂々と入る勇気はまだなく、少し覗くようにして中の様子を伺う。


ネットを張っている途中のようで1年生が行っているようだ。
黒尾の姿もなければ、研磨の姿もない。



『お、名前ちゃんじゃん。』

「!!あ、先輩っ」


どうしようか、と悩んでいるところへ、背後から黒尾が夜久と研磨と共に現れた。
黒尾にペコリと頭を下げる彼女を見て、『へぇー。今日はやる気満々だな。』と舐めるようにその姿を見る。



そんな黒尾を夜久が『やめろ。お前のせいで夢経たれるかもしれねぇだろうが。』と止めに入った。

研磨はそんな二人の横を通り過ぎ、名前の隣で靴を履き替える。


「ちゃんと、考えた?」


呟くような声で、そう問いかけられた名前。
研磨に視線を向けると、少し微笑んだ。


「あの、黒尾先輩。」

『ん?』


夜久と言い合いをしていた黒尾に、声をかけた名前。
黒尾と夜久は彼女を見て、研磨は体育館に入り、その声に耳を傾けていた。



「きょうは、マネージャーのお仕事を少しさせていただけませんか?」


「お願いします。」と黒尾に頭を下げた彼女に、夜久が口角をあげた。


『名前ちゃんだっけ?』

「あ、はい…!」

『バレーは好き?』

「はい!もちろんです!」


『うん、じゃあ俺は大歓迎だよ。ぜひうちのバレー部に入ってもらいたいもんだねぇ…?』と夜久が隣の黒尾を覗き込むように見た。


『なんだよ…』

『お前、まさか…断る気なんじゃねぇだろうな?』

『なっ、んなわけねぇだろ…』


黙っていた黒尾に夜久が代わりに答えを促す。


『いいって。じゃあ、マネージャーのすることは主に1年がしてることなんだけど…あ、俺3年の夜久衛輔ね。』

「はっ、はい!」



夜久が靴を履き替えるなり、体育館へ入ると名前に説明を始めた。
それに着いていく名前を見てふっと笑った黒尾。



「…きもちわるい。」

『なっ、だって嬉しいじゃねぇか。』



黒尾から視線を外した研磨は「うん。」と返事して、黒尾をもう一度見て口角を上げた。


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