赤いリボンの猫[完結] | ナノ

片付け


部活の片付けをしている時、研磨が黒尾に声をかけた。



「クロ。」

『ん?どうかしたか?』


この顔に数多くの女子は心を持っていかれる。
そんないい顔を向けたが研磨にはなんの意味もなかった。


「マネージャーのこと、まだ監督には言わないで欲しい。」

『何で?』


腕を組む黒尾から視線を落とす研磨を不思議に思って、様子を伺う。


「…名前は、クロがあそこまでしてくれたから、マネージャーを引き受けたんだと思う。」

『…あー…なるほど。俺の行動が浅はかだったと?』

「うん…まぁ、そんな感じ。」



視線を上げては落とす研磨。
黒尾は彼女にしたことを考え直していく。


「…あんなに、あっさり“やる”って言ってくれたのは、その場での答えであって…名前、先を考えてなかった。」


黒尾が彼女に行ったことが結果的に、あの時に引き受けざるを得ない形にさせてしまった。
あの場で、あれだけのことを黒尾にさせた彼女が断ることなんてできるわけがない。と研磨は伝えていた。


その説明を聞いた黒尾は、確かに。と心の中で納得する。

そして視線を落とし、研磨を見て“しっかし、よく考えてんな…コイツ。”と不敵な笑みを見せた。


『さすが、うちの“脳”だねぇー。』


黒尾の発言に視線を上げ「…ちゃんと考えないと…したいことができる時間を奪うことになるんだから。」と研磨は言う。


『ん?なんか、それ…自分のこと言ってねぇか?』

「…本当のこと。」


手に持っていたボールを背後に誰かが運んできたと思われるボール籠に入れる研磨。

その姿を眺めながら、黒尾がニヤッと笑った。



『…ってか、お前さっき苗字のこと名前で呼んだだろ。』

「…あ、そうだ。苗字だ。」


研磨は彼女の苗字をど忘れしていた。
記憶を辿ると出てきたのはお昼休みに聞いた名前だったため、妥協をして名前で呼んでいた。


『は?忘れてたのか…?ってか、名前って言うのな。名前。』

「…クロは名前で呼ぶの禁止。」

『はぁ?何で?』

「みんな、名前で呼ぶようになる。」

『いーじゃん、別に。』

「…軽い。」

『えっ?!』


研磨から衝撃的な一言を喰らい、黒尾は固まる。

その姿を見た夜久が『黒尾、邪魔だ。どけ。』とモップを片手に呆れていた。


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