赤いリボンの猫[完結] | ナノ

ジャージ


とりあえず今日は、これ以上邪魔できない、と思い黒尾に「きょうはここで帰らせてもらってもいいですか?」と問いかける名前。
黒尾も「あぁ。俺から監督たちには伝えておく。」とだけ言い、体育館を後にしようとした名前だったが、自分の服装を見て「あ。」と呟いた。


孤爪くんのジャージだった…洗って返そう。


身に馴染み、忘れていた研磨から借りたジャージを脱いで畳み、靴を履き替えていると背後から足音が近づいてきた。


振り返ると、ちょうど目の前にたつ研磨の姿。



「ジャージ、もらう。」

「えっ、いいよっ洗って明日返してもいい?」

「そんなに、動いてないでしょ?持って帰るよ。」


そう言って手を出す研磨。

その手を見て、ふふっと笑った名前は、自分の手でその手を掴んだ。


一瞬目を大きく開いた研磨に名前が言う。


「孤爪くんに会わなかったら、マネージャーなれなかった。ありがとう。」


ふわっと微笑む彼女に、研磨が尽かさず「ねぇ。」と声を発した。


「本当に、いいの?マネージャー。」

「もちろん!みんなの力になれるように頑張るね!」


そう言って研磨の手を離す名前。
すっかりジャージのことを忘れた研磨は目の前にいる彼女に「もう少し、考えたほうがいいんじゃない?」と提案する。


その質問に、首を傾げる名前。


「嫌だからね?思ってたのと違ったから、辞めるなんて言われるの。」


研磨の言葉に、彼女は少し心配になった。



「そんなに、忙しい?大変?」

「うん。大変。忙しいし…休みだってないに等しい。」


「好きなこと、できてたこと、できなくなっちゃうよ?それでもいいの?」と研磨が最後に発した言葉は彼女の脳裏を占領した。


『おい、研磨!』と黒尾に呼ばれた研磨は、「よく考えておいて。」とだけ言い彼女に背を向けた。


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