赤いリボンの猫[完結] | ナノ

自信


『どうした。なんか、落ち込んでねぇか?』

「別に…」



日曜日。この日も1日中体育館で練習の日。
明日から中間テスト一週間前となるため、部活が休みになる。
それまでに休む間もなく練習を入れられていた。


体育館で、さぁ本腰を入れて行こうか、という時に、研磨の常に元気のない感じがいつも以上に感じた黒尾。


それは、マネージャーも同様だった。


昨夜、更衣室での一件で帰りは名前が気まずそうに、でもいつも通り話しかける。
しかし、研磨はゲームに集中…どころか、気になって集中できていなかった。

研磨の無視もいいところ、名前は落ち込んでいた。



『何があったのか知らねぇけど…早く仲直りしねぇとアイツ、モテるぞ。』

「…知ってる。」

『え。』



研磨は、昨夜、思い知らされた。
メッセージという術もあるのだと。

ただ、望月のように正面から来る者もいれば…知らないところで彼女に手を伸ばす者もいるのだと。



『まさか…名前のヤツ、また告られたのか?』



研磨が変だと、感じた黒尾。
さすが幼なじみ。気づくのが早い、そして思考判断力がずば抜けている。

たった、知っていると言った研磨の一言で黒尾はまさか…と思ったのだから。



「名前が、俺を好きになるのは…変。」

『はぁ?なんでそう思った?』



黒尾は研磨の言葉に眉間に皺を寄せた。
すっかり元気のない研磨は、ボールを人差し指で転がす。



「俺は、何も取り柄がない。…名前は、誰から見ても、魅力的なのに…俺、魅力なんてないし…」



『…それは、お前が想うお前だ。』

「え?」



黒尾が、口角を上げて研磨を見ていた。



『名前だって、自分に魅力があるなんて思ってねぇよ。思ってたら、あんなことしてねぇ。』



黒尾の視線の先を辿る研磨の視界に入るのは、体育館にベッタリ座り込んでバインダーに必死にかじりつく名前の姿。



『お前が名前に魅力を感じてるように、名前も研磨が好きだと言うからには、それ相応の魅力は感じてるだろうな。』

「…何かをされた訳じゃないのに、名前の好きって言う言葉が、信じれないのは…どうしてなんだろう。」

『それは研磨が、名前をそれだけ遠い存在だと思ってるからじゃねぇの?』



黒尾の言葉に、研磨は顔を上げた。

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