赤いリボンの猫[完結] | ナノ

うるさい


「…。」

「ねぇ、研磨ー、ボール投げる位置なんだけど…」



休憩中、体育館の壁に背を付けて座り込む研磨の近くに言って話をしようと思った名前。

しかし、彼はじっと彼女を見て黙ったままだ。

名前は首をかしげて「研磨?」ともう一度名前を呼ぶと、タオルを頭に被り、顔を見せないようにした。



「…何、話してたの?バスケ部の人と。」

「望月と?鍵の話でしょ…あと、研磨の話もしたよ?」

「俺の?」



タオルと髪の間から除く顔が、眉を寄せて不安そうに見えた。

名前は笑顔で頷く。



「うん。うちの大事な司令塔です。って。」

「まさか…クロの…」

「うん。鼓舞、用いました。」

「やっぱり…」



嫌そうな顔をして顔を再び俯かせた研磨。
その隣に腰を下ろして、タオルをスルッと取ると、金色の髪がサラッと揺れる。


研磨の横顔に、ドキドキする。
その顔に手を伸ばすと、容易に触れることが出来た。



「よかった。名前のことじゃなくて。」

「私のこと?」



とは何?と首を傾げる彼女に視線を合わせた研磨。



「名前、取られるかと思った。」

「そんなこと、ないよ。」

「二人見ると…気になる。」



研磨は、望月が名前のことを好きだとわかっている。
相手は黒尾が言うイケメン、バスケ部員。
研磨にとっては、自分より魅力である望月に名前が奪われるのではないかと、ずっと不安だった。



「研磨…」

「なに…」


不安そうな、研磨に名前は、微笑んだ。
その顔を見た瞬間、研磨は眉間に皺を寄せた。



「かわー…」

「うるさい。」



タオルを彼女の顔に突き出した研磨。



「…研磨の匂い。」

「…やめて…恥ずかしい。」



タオルに顔を埋める名前に研磨は「返して。」とタオルを取り上げた。



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