赤いリボンの猫[完結] | ナノ

ゲームより、電話より


「名前…重い。」



孤爪宅にて、黒尾待ちである二人。
研磨はひたすらゲームを行っており、つまらない名前は研磨の肩に凭れ掛っていた。



「うー…ん?」



研磨の肩から身を起こした名前。
ポケットから携帯を出した。



「はい。」



『苗字?今どこ?』



「研磨の家です。黒尾先輩待ちです。」



電話の相手は夜久だった。

研磨はゲーム画面から視線をあげ名前をチラッと見る。



『黒尾電話出ねぇんだよ。俺らもう着いてんだけどさ、部費持ってんの黒尾?』



「いえ、私が持ってます。」



「はい」と返事をする彼女を見て、何を思ったのか研磨がゲームを置いてその背後から腕を回した。



「え…」



驚いた名前は首を横へ向ける。
研磨は何も言わず彼女の首筋に顔を埋めた。


髪が首筋に触れてくすぐったい名前はぐっと堪える。

電話の向こうからは『苗字?』と返事をしない彼女を不思議がる夜久の声。



「は、はい!聞いてます!」



研磨が「嘘。聞いてないくせに。」と呟く。

それが夜久に聞こえたらしく『聞いてないのかよ…』と呆れた声色が返ってきて焦る名前。



「いえ!聞いてます!」



『とりあえず早く来てくれー』



『じゃあな。』と電話が切られる。
その瞬間研磨を睨んだ。



「研磨のせいで夜久先輩怒ったかも…しかもちゃんと聞いてた…。」



「聞こえるように言ったからね。」



「それより―…」と研磨が身を寄せた。
心臓の音が加速する。



「かまってよ。」



それを聞いた名前はムッとする。



「さっきゲームに夢中だったくせに。」



「…甘える名前、見たかったから。」



「ごめんね。」と優しく囁く研磨をじーっと見る名前の視線は何か言いたげな表情をしていた。



「ん。」



「?」



研磨と向き合うように体を回すと、両手を広げる名前。
それを見て首を傾げる。


「んっ!」



「…なに?」



広げた手を主張するが首をさらに傾げる研磨。

名前は俯いて、小さな声で言う。



「…ぎゅって、して。」



それを聞いた研磨は視線を落とした。



「…恥ずかしいのは私なんです。研磨さん。」



「うん…わかってるけど…」



「照れる…」と言う研磨に、きゅんとする名前。


身を寄せようとした時、ガチャッと開けられた扉。
姿を現したのは部員を待たせている主将の姿で…



「…すまねぇな。」



「あっ!違います!勘違いです!!」



一言誤って戻ろうとした黒尾を必死に止めに行った名前だった。

研磨は「クロのせいで…」と少し残念な気持ちになっていた。



-END-

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