赤いリボンの猫[完結] | ナノ

部活での会話*続


「ねぇ…」



部室の扉が開き、研磨が入ってきた。
その姿を見て後輩たちが口々に挨拶をするが、研磨はそれより…と口走る。



「リエーフ、誰か来てるよ。」


『え?!』



誰ですか?と上半身裸のまま研磨に近づく。
研磨は扉の向こうを見据えて「よくわからないけど…すごい剣幕でたくさん質問された…」とダルそうに言う。

研磨がトボトボと携帯でゲームをしながら歩いていると、部室前で『あの、バレー部の人ですか?』と声をかけられた。


女子生徒だったため驚いた研磨は「え…」と答えに一瞬戸惑いを見せた。
その瞬間をも彼女は質問を続ける。



『灰羽くんいますか?呼んでもらえますか?』


「え…と…」



“誰?”と口にしようとした時、背後から救いが現れた。



「リエーフのこと?」


「…名前。」



カゴを片手に現れたマネージャー兼彼女にホッとした。
あとは任せようと部室へ入ろうとした時、聞こえた。



『はい!その…伝えたいことがあって…時間ありますかね?』


「うん。大丈夫だよ。ここで待ってて、さっき部室入っていくところ見たから、もうすぐ出てくると思う。」



リエーフのこと…。



そう思った瞬間、研磨は“人の勝手だしね。”と部室へ入っていった。

そして、今に至る。



「ちゃんと服着て出なよ。女子だった。」



研磨の言葉を聞いた部室全員がぎょっとした顔をしてリエーフを見た。

こんなとき黙っていないのは山本だ。



『じょーしーだーとー?!おい!研磨ぁ!!本当なのか?それは本当なのかー!!!』



「ちょ…うるさ…離して虎。」



隣で着替えようと準備を始めた研磨の両肩をがっしり掴み彼を前後させる山本。
被害者の彼はとてつもなく嫌な顔をしてそれはもう不機嫌な声色で止めた。


リエーフは『女子…』と静かに自分の荷物の元へ戻り、シャツを着る。

犬岡がそんな様子のリエーフを見て『…うれしいのか?こわいのか?大丈夫か?』と心配したような声をかける。


リエーフは何も言わぬまま部室を出た。


その瞬間山本が扉を少し開けた隙間から様子を見る。

研磨は、はぁ…と呆れるようにため息をつき言う。



「虎も好きな人つくれば?」



『ぶっ…あ、すまねぇ。』



研磨の一言に、変に口出ししないようにしていた黒尾が堪えきれずに笑う。
山本がギッと鋭い目で研磨を見る。



『てんめぇ…研磨ぁ!』



『はいはーい。ストーップ。ほれ、告白ならそろそろはじまんじゃねぇか?』



研磨の前に黒尾が立ち、扉を指さす。

山本は黒尾には逆らえず、『…うす。』と再び研磨に背を向け扉の隙間を覗く。



『やーめろ。お前も。』



黒尾は呆れているのか楽しんでいるのかわからない表情を研磨に向ける。
その視線からふいっと逸らすと、「出られない…」と山本の背を睨んだ。



『どーだー?告白だったか?』



夜久が山本に問いかける。



『…よくわかんねぇっす。』



「『『……。』』」



『もういい、出るぞ。』そう言って黒尾を筆頭に扉が開かれ部室から部員たちが出てくる。


山本もそれに続くように出たが、普通に話すリエーフの姿に誰もが確信した。



“あれは告白なんかじゃなかった”



ただの伝達事項だった。



-END-


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