赤いリボンの猫[完結] | ナノ

叶わぬ恋


2年4組。
そこは、井上クラスと呼ばれ、なぜか美男美女が多いと同学年の生徒からは一目置かれている。

井上クラスとは、担任の先生が井上という若いそこそこイケメンな先生がいることからつけられた通称だった。


すれ違う女子生徒が視線を釘づけにするのは井上クラスで女子の人気をずば抜けて得ているバスケ部の望月だ。


身長は178センチ。
鼻筋の通った美肌の好青年イケメン。

そして、性格はとても優しく、聡明、運動神経も抜群ときた。


しかし、彼のことを好きな女子生徒ファンは、それだけが良いのではなかった。


一番、重要なのは…



『お前が誰彼構わず、一途に想っている姿に惹かれてんだろ?』



望月と同じくバスケ部2年の川上が雑誌に目を向けながらそう言う。
彼も同じく井上クラスの代表的な存在だった。

クラスでは人気者、元気が取り柄…というわけではないイケメンだ。


しかし、奴はチャラい。
寄ってくる女の子にどこでも触れ、たまにできるオフにはあんなことやこんなことをして楽しんでるような者だ。


特定の彼女も持たず、自分の好き勝手な人生を歩んでいる。



そんな川上の隣を歩く望月だからこそ、彼は際立って見えるのかもしれない。



『でも、お前目当てで寄ってくる女は一途に愛されたいってことだろ?みんな一途だから振られても他いんじゃん。』



雑誌から視線を上げ、望月に不敵な笑みを向けた川上に、彼は眉間にしわを寄せて「やめろ。」と言って座っていた机から身を下した。


ズボンのポケットに片手を入れて、2年4組の教室を出ていく。



『どこ行くんだよー?』



ふざけたことを言う川上を無視して廊下に出ようとした時だった。



「わっ…っと。」



『おお。』



ふわっと香るフルーツの香りが望月の鼻を掠めた。
ドキッと胸が鳴る。


パックジュースを飲みながら、突如姿を現した彼女を瞬時によけた望月。

薄く小さい唇からストローが離れる。

別けられた前髪からのぞくパッチリとした二重瞼に、大きい瞳が彼を捕えた。



「望月かー。」



なんだー。と言いながら教室に入っていく彼女。

彼女の瞳に入れたのはほんの数秒。



もっと、見てほしい。

他の女子からの視線なんていらないから、お前の視線だけが俺は欲しいよ。



想えば、想うほど、触れたくなる。

1年生の時から仲良くなり、喋るうちに好きになっていった。

どうせ、顔で仲良くしてくれてる、なんて思っていたが…
そうじゃないとわかったのは、彼女の誰に対しても全く変わらない人柄と…



最近、できた、彼氏で確信した。



「名前。」



そう呼ぶのは、学年でも、いや、学校中で有名なプリン頭の男。

その背には同じく2年のバレー部員がいた。


招集がかかったようだ。



名前を呼ばれ、パッとドア方向を見た彼女は見たことのないほど頬を緩めて「研磨!」と可愛い声で呼ぶ。



彼女は、井上クラスの中でもダントツ可愛く、人柄もよく、人気者だ。
運動は学年一できる女子である。


そんな彼女を射止めたのは、プリン頭の奴だ。


望月がジッと研磨を見る。
その視線に気づいているのか、気づいていないのかわからないが目が合うことはない。

しかし、彼女が「行こう。」とバレー部員に声をかけたとき…目が合った。


奴は、俺が彼女を好きなことを知っている。



「…クソ…。」



『…叶わない恋も、つれぇなぁ。』



「んなの、まだわかんねぇだろ。別れるかも。」



『なんてことを言うんだお前は…』



そう言った川上は言葉とは反対にふっと笑った。



『ま…傍で見守ってやれよ。』



その言葉に、望月は悔しさを噛みしめた。



-END-


[ 105 / 110 ]
prev | list | next

しおりを挟む