招くものは…
「ニャー」
「えへへ…よしよし。」
『『…。』』
体育館の外で仕事を終えたマネージャーが研磨の連れてきた猫の相手をしている。
部員たちは汗を拭いながらその状況を見ていた。
『いーなぁ。』
『かわいすぎる…』
『いいな…猫になりたいっす。』
黒尾、山本、リエーフが並びながら名前を見る。
犬岡と夜久と研磨はコートで練習を行っていた。
『犬岡ー!交代だ。』
『うっす!!』
パタパタと駆けていく先は黒尾の元。
名前を見ているその背に声をかけると黒尾はタオルを端においてコートへ向かった。
コートにつくと、研磨がボールをじっと見つめていた。
彼の醸し出す不穏な空気に、黒尾は顔を引き攣らせた。
『け、研磨。』
「…。」
『悪かった。頼むからトスあげてくれって。』
黒尾と研磨のやり取りを見てため息をつく夜久。
うちのマネージャーも困ったもんだな。と腰に手を当てて苦笑いをする。
視線を移した夜久は目を細めた。
いや…違うな。
リエーフと山本の視線の先を見る。
『招き猫の招いたことか…?』
そう呟いた後、再び言い合う二人に視線を移しふっと笑った。
『おい、怒るならあの猫だろ?』
言い合いをやめた二人が口角をあげた夜久を見た。
『猫?』
黒尾の声とともに夜久の足元には猫がいた。
座り込みニャーと黒尾に向かって鳴く。
「だから言ったじゃん。招き猫だよって。」
研磨の言葉に黒尾はその猫の頭を撫でた。
『お前…すげぇやつだな。』
いや…考えろよ。もっと。
なんでも招かれたことだと思えんだぞ。
と夜久はため息をついた。
その猫を抱き上げた黒尾が『よーし。招き猫も来たことだし。』と声を上げる。
ぞろぞろと黒尾の周りに部員が集まる。
ニッと口角を上げた黒尾。
名前はその光景を見て胸を高鳴らせた。
『春高、行くぞ。』
その言葉は、力強さで満ちていた。
-END-
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