赤いリボンの猫[完結] | ナノ

対面


 部室へ向かって歩き出した研磨の背を追うようについていく名前。その彼女に向かって疑問に思ったことを投げかけた研磨。


「一人で、サッカーしてたの?」
「うん! 球技好きなんだよね! あ、あと水泳も好き!」
「……楽しい?」
「もちろん! じゃないとしない!」


 まぁ、そうだよね、と再び前を向き直る研磨に、名前が「孤爪くんはバレーが得意なの?」と聞くと「うーん…どうかな」と曖昧な返事をした。そうでもないのかな?と思った名前は、じゃあなんでバレー部に?と疑問を持つ。


「クロに、誘われたからやってるだけだし……」


 続けて述べられた返事に、彼女は納得した。そういえば……クロが名前を見て“運動できる人”って言ってたんだよね……当たってる。彼の人を観察する目は、すごいなと研磨はこの時感じた。

 部室棟につき、「待ってて」と彼女に告げると、ちょうど部室から姿を現した目的の人物。研磨を見るなり「お、研磨。遅かったな。早く着替えろよ」と声をかけるだけかけて素通りしていった彼に、「ちょっと、クロ」と声をかけた。
 「なんだ?」と振り返って研磨を見る黒尾に、ペコリと頭を下げた名前。この時、黒尾が彼女に視線を向けた。


「け、研磨? おまっ……女連れてきたのか?!」


 ギョッとして一歩後ずさる黒尾に、研磨はめんどくさそうに「苗字さん」と雑に紹介する。「え?」と固まる黒尾に、彼女は「苗字です…」と苦笑いする。
 ニッと笑った黒尾は研磨に「よくやった。研磨」と彼女に誤解を招くような言い方をしたため、「早く、わけを話して開放してあげてよ」とだけ言って部室へ入っていった。


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