縁
ガラガラと部室の扉を開けた研磨。
そんな彼に、部室にいた部員たちが挨拶をするが、語尾がみんな消えていく。
彼の腕の中を見て、呆気にとられていた。
「なに…?」
『かわいい。』
『可愛い…』
『研磨さん!どこで拾ってきたんすか?』
夜久と黒尾に続きリエーフがその猫の頭を撫でる。
「ついてきてたみたい…どこからかわからないけど…。」
『かわいいなぁ、お前!』
リエーフは研磨の返事なんてそっちのけで、眼中には猫しかいなかった。
『でも、お前…そいつどうする気だ?』
黒尾が着替え終え、リエーフの背後に現れた。
研磨は黒尾を見上げた。
リエーフが平然とした口調で答える。
『うちの招き猫にするんすよね!研磨さん!』
「招き猫…。」
それいいかもしれない。と思った研磨は黒尾を無言で見つめた。
黒尾は察した。
『拾ったところに返してきなさい。』
「えー…」
『えーじゃねぇよ。飼えねぇだろ、普通に。置物じゃあるまいし。』
『しかも飼い猫なんじゃねぇの?リボン。』と黒尾は指をさす。
研磨は「そうかもしれない…けど…」と俯く。
その様子を見た部員たちが首を傾げた。
「本当に、招き猫…だよ?」
「いいの?」と訴えている視線をみんなへ向ける研磨。
『どこをどう見て招き猫っていうんだ?』と夜久が問いかける。
抱いている猫の頭を撫でて研磨が言った。
「うちに…マネージャーを招いてくれた猫だよ。」
部員たちは頭を抱えた。
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