赤いリボンの猫[完結] | ナノ

面倒なことに


体育館を出た名前と研磨が向かった先は第三体育館。
入口で中の様子を伺う二人。


黒尾とリエーフ、日向と月島、そして木兎と赤葦がいた。



「…黒尾先輩のチーム背高い。」

「…でも、翔陽のチームには梟谷のエースとセッターがいる。」



今朝、試合後に話してから、名前によく声をかけてくれるようになった梟谷の木兎。

じーっと見つめていた時、どうやら見すぎたようで視線を感じたのか黒尾が振り返った。

バチッと目が合ってしまった名前はあたふたとする。


その姿を見た黒尾が腰に手をあて、口角を上げる。



『あらあら、名前ちゃんじゃないの。』



乙女口調で歩み寄ってくる黒尾に研磨は幸いにもまだ気づかれておらず身を隠す。
チラッと研磨を見ると口に人差し指を当てていた。

黙ってて、ということだろう。

名前は黒尾に「遅くまで頑張ってますね。」といつもの如く声をかける。


さすが、黒尾だと二人は思った。



『お前らカップルもこんな遅くまで何の練習だ。』



そう言って研磨の方へ顔を覗かせる黒尾。
研磨は「なんでわかったの。」と言う。



『そりゃお前、この黒尾様が気づかないはずがないだろ。』

「…もしかして、初めから気づいてた?」



眉間に皺を寄せた研磨に『当たり。』と笑った。



『名前ちゃーん!!俺のかっこいいとこ見てた?!見てた?!』



黒尾の両肩をつかみ、しゃがみ込む上から姿を覗かせた木兎に苦笑いをする名前。

リエーフが『名前さん!中で見てってください!俺もっと頑張ります!研磨さんに負け―…』と何か言いかけたところを研磨が声を重ねた。



「リエーフ。」

『……け…け、研磨さん?!』



口をぽかーんと開けた状態で一時停止したリエーフは、目をばっちり開けて研磨の声をした方を覗き込むと顔を真っ青にする。



『…す、すみません。彼女さんと喋ってしまって…』

「え。」

『は?喋っていいだろ。マネージャー兼彼女だけど。』



リエーフのしょぼんとした姿に、研磨は怪訝な顔をし、黒尾は呆れた。



「別に、マネージャーしてる時は彼女というより、マネージャーだから、気にしない。」

『ほら、研磨もこう言ってることだし…』



と黒尾と研磨がリエーフに言葉をかけるが、それを黙って一人聞いていた木兎が『ちょ、ちょっとまて。』と手を出した。



『名前ちゃんの彼氏って…』

『あー…そうだ。』



黒尾は木兎の存在を思い出し、めんどくさいことになったと心の中で思った。



『黒尾だったのか!!』

『…は?』



『余計面倒なことになった。』と黒尾は研磨にアイコンタクトを送る。
研磨は黒尾にふっと笑うと立ち上がり、「名前、いこう。」と食堂へ向かう。


名前は木兎に質問攻めを食らっている黒尾に手で謝罪しそそくさとその場から離れた。



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