赤いリボンの猫[完結] | ナノ

烏野のリベロ


日が暮れ、きょうも練習が終わった…と体育館の端で片付けをしていた名前。


「お…重たい…」と言った直後のことだ。

ひょいっと手から重みが消え、持っていたはずの物を目の前の人が持ってくれた。



「あ、あの…」

『この前、うちと練習試合した時来てましたよね。』

「…あ!!烏野のリベロっ…の人…ですよね?」



ユニフォームではなくゼッケンなためわからなかったが、髪型を見て記憶を遡った。
名前は思い出したが、確信がなく、語尾は完全に自信をなくしていた。


そんな彼女にはにかんで笑った彼は輝いていた。



『この前…馴れ馴れしく声かけてすいませんでした!』

「い、いや…全然!」

『あれから声かけにくくて…ってか…声かけようにも、かけらんねー雰囲気で…』



「あ、あー…」と名前は黒尾や夜久、山本などを思い出し苦笑いをする。
直すものを直してもらったおかげで、片付けを無事終えた名前は準備室から出た。



『あ、俺、西谷っていいます。2年っす!』

「同じ年だね。私は苗字名前です。」

『同じ年だったのか!音駒の主将か3番さんと喋ってるから、先輩だと思ってた。』

「…夜久先輩かぁ。」



さっき、紹介しあった二人とは思えないほど仲良くなっていった二人。
会話が弾み、自然と笑顔を見せるようになっていった名前。



『研磨ー!!トス上げてくれー!』



体育館で話す二人の前を駆け抜けてったのは烏野の1年生。
その背を見ながら西谷が『翔陽は練習か…』と呟く。


名前は研磨という方に反応して視線をそちらへ向けた。



ダルそうに、でも、しぶしぶ上げてあげるのだろう研磨の姿を見て頬が緩んだ。



『俺も練習してくるわ。』

「うん。また話そうね。」

『おっ!』



西谷の姿を見送り、研磨の姿をこそっと見ようと体育館の壁で集まっている部員たちの元へ向かった。



『あれ、リエーフは?』



夜久が辺りを見渡しながらどこかから帰ってきた。



「あ、リエーフなら第三体育館のほうに…」

『はぁ?』



名前の報告を聞いた夜久はすぐ出て行った。

前を向くと、目の前に細い脚が見え驚いて顔を上げた。



「け、研磨か…」

「今日は食事当番じゃないの?」

「うん。食堂行く?」



「うん…でも、その前に。」と名前をじっと見つめる研磨。

名前は首を傾げた。



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