赤いリボンの猫[完結] | ナノ

ズルいぞ


『あー!!音駒のマネージャー!!』

「!!」

『おい、うるせぇぞ。』



試合を終え、次の試合の始まる前に、タオルを首にかけた木兎が名前の姿を見て指をさす。

名前は驚き、黒尾は呆れた。
研磨は名前の傍にあるベンチに腰掛けて他人事のように知らぬふりをしているが、耳は傾けていた。



『うひょーっ近くで見るとめっちゃ可愛い!!超可愛いっ!!』



あはは、と高らかに笑う木兎を見上げる名前は顔を引き攣らせながらも必死に笑顔をつくる。

コートにいた時と、目の前にするとではやはり迫力が違った。



「あのっ黒尾先輩から聞いたんですけど…全国で5本の指に入るって本当ですか?」



黒尾に昨日聞いた話だ。
それを聞いた名前は、日本の5番目に入る人がいるなんて…ととても驚いたと同時に、目の前にする凄い人に、彼女は尊敬の眼差しで見上げていた。

そんな名前に堂々と胸を張って『おう!そうだ!』と言う。


黒尾が背後から『あまり調子乗らすなよ、名前。』と呆れた声で名前に助言したのを木兎は聞いていたらしく『いいじゃねぇかよ!事実だろ!!』と声を張り上げる。


研磨は眉間に皺を寄せながらボトルを口にしていた。



『ってかってか、名前って名前なのか?!』

「あ…はい。」

『黒尾から名前聞いてなかったから、いー名前してんなぁ〜。』



戸惑いを見せる名前なんて気にもせず、どんどん聞いてくる木兎に押される名前。



『あー…口が滑った。』



黒尾がそういいながら研磨の隣に腰かける。



『2年か?』

「はい。木兎さんの後輩です。」

『…後輩、だと?』



衝撃的なことを聞いたかのような反応を見せた木兎に首を傾げる名前。
黒尾が『お前なんかの後輩についてたらアホが移る。』と暴言を吐く。


それにショックを受けた木兎は傍にいたセッターの赤葦に涙目で『俺ってそんなに尊敬できない先輩かな?』と問いかけたところ…

『まぁ…はい。』と言った赤葦に『そこは否定するところだろうが!!』と泣きつく。



名前はくすくすとその光景を見て笑みを見せた。
笑顔を見た木兎はピタッと動きを止める。



『…可愛い…ずるい音駒!!ずるいぞ黒尾!!』

『なんで俺なんだよ。』



ベンチで聞いていた黒尾が名前の背後から木兎を見た。



『毎日こんな笑顔が見れるなら俺だってもっと頑張れる!!』



そう言い張る木兎に、ふっと笑った黒尾。



『木兎よ。毎日一緒にいたって名前に彼氏ができたら…そんなこともなくなんだよ。』

『ハッ…そうか…彼氏という奴がいるのか!』



木兎が名前に『やっぱり音駒にいるのか?!誰だ!こん中にいるか?!』と問い詰めるがその背後から赤葦が『頼むからやめてください。』と止めに入っている。

そんな背後で黒尾が『彼氏というやつ…』と、不敵な笑みをベンチに腰かけている研磨に向けた。

研磨はその視線に気づき怪訝そうに黒尾に「なに?」と問いかける。



『…ここで一丁、公にしてみたらどうだ?声かけてくる奴減るだろ。』

「えー…やだ。」

『何でだよ。メリットしかねぇだろう。』

「…だって、目立つ。」

『…それは否めねぇな。』



結論、彼氏が研磨だとは知られることなく、その時を終えた。


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