赤いリボンの猫[完結] | ナノ

正体


「あ、うん。昼休みの時でしょ? うち(四組)に来てたよね」


 落ち着いていて…明るい。いい人そう。


 研磨は、そんな印象を彼女に受けた。


「うん」
「誰か探してたの? えっと……バレー部の……主将さんも来てたよね?」


 バレー部の主将というワードに、研磨は眉間に皺を寄せた。


「クロ……」
「そう! 黒尾先輩だ!」


 思い出し、笑顔を見せる彼女に研磨は、やっぱり、クロは目立つんだ……と再確認させられた。


「クロが、探してたんだ、人」
「四組に?」
「うん。苗字って人なんだけど、四組にいる?」


 そう研磨が、問いかけて見ると名前はニコッと笑った。


「紹介、まだだったよね。私、苗字名前」
「あ……え?」


 苗字?


 その苗字を聞いた瞬間、研磨は目を丸くした。目の前の名前はふんわりと笑う。


「でも、なんでバレー部の主将が私なんかを探してただんだろう?」


 首を傾げた名前に、研磨は言いにくそうに口を噤む。


「え、言いにくいこと?」
「……クロに聞いて」


 研磨の表情から、あまりいい話ではないな、と悟った名前は「えー……嫌な事は先に終わらせておきたいなぁ……」とサッカーボールを眺めながら言う。


「じゃあ、今から行く?」
「……黒尾先輩のところ?」


 うん、と頷いた研磨に、名前は意を決したように喉を鳴らした。


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