正体
「あ、うん。昼休みの時でしょ? うち(四組)に来てたよね」
落ち着いていて…明るい。いい人そう。
研磨は、そんな印象を彼女に受けた。
「うん」
「誰か探してたの? えっと……バレー部の……主将さんも来てたよね?」
バレー部の主将というワードに、研磨は眉間に皺を寄せた。
「クロ……」
「そう! 黒尾先輩だ!」
思い出し、笑顔を見せる彼女に研磨は、やっぱり、クロは目立つんだ……と再確認させられた。
「クロが、探してたんだ、人」
「四組に?」
「うん。苗字って人なんだけど、四組にいる?」
そう研磨が、問いかけて見ると名前はニコッと笑った。
「紹介、まだだったよね。私、苗字名前」
「あ……え?」
苗字?
その苗字を聞いた瞬間、研磨は目を丸くした。目の前の名前はふんわりと笑う。
「でも、なんでバレー部の主将が私なんかを探してただんだろう?」
首を傾げた名前に、研磨は言いにくそうに口を噤む。
「え、言いにくいこと?」
「……クロに聞いて」
研磨の表情から、あまりいい話ではないな、と悟った名前は「えー……嫌な事は先に終わらせておきたいなぁ……」とサッカーボールを眺めながら言う。
「じゃあ、今から行く?」
「……黒尾先輩のところ?」
うん、と頷いた研磨に、名前は意を決したように喉を鳴らした。
[ 8 / 110 ]
prev | list | next
しおりを挟む