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微睡みの道〔2/7〕



 そんなリンクが突然「シャトーロマーニが飲みたい」と言い出したのは前回の「三日目」、しかも時の歌を吹く直前だった。チャットは文句を言う間も、立ち直ってくれたことに安心する間もなく、短い歌のリフレインとともに白い闇に引きずり込まれた。そして、気がついたら「シャトーロマーニを飲む」どころか「今回の三日間はオフ!
有意義なことは何もしない」ということが決定事項になっていた。呆れて文句も挟めなかった。その代わりに質問はしたが。

『はいはい、仕方ないから今回はお休みにしてあげるわよ。でも、わざわざオバケを退治してクリミアさんの馬車に乗る意味あるの?
夜にミルクバーに行けばいいだけじゃない』

「あるよ。オバケを退治しなきゃ町まで馬車を出してくれない」

『だからなんでそんなことするの』

「そりゃ、僕が新鮮なミルクを飲みたいからだよ」

 何でそんなこと聞くの? とでも言い出しそうな顔で切り捨てられてしまった。
 そして今朝、無事オバケ退治を終えた二人は、ウシの世話をしているクリミアに「ミルクを届けにクロックタウンまで一緒に行く」という約束を取り付けた。今は出発時間の午後六時まで、牧場近くで暇を潰しているところだ。「ナデクロさんにちょっかいかけに行くか、ドッグレースで一攫千金を狙うか……。エポナを呼んで走り回ってもいいなあ」

 回想するチャットを尻目に、リンクは実に楽しそうにロクでもない計画を練っていた。

「ねえ、チャットは何がしたい?」

 唐突に話題を振られた妖精はしばらく考える。知らない、勝手にしてよ、と言いそうになった時、あるアイディアが頭に浮かんだ。少し意地悪な気分だった。

『賭け、なんてどうかしら』

「じゃあドッグレースか。チャット得意だもんね」

 彼は勝手に納得した。前にドッグレースでまことのお面装備のリンクと勘だけで選ぶチャットの二人で対決をしたことがあったのだが、見事にリンクが全敗したのだった。それ以来彼は相棒の強運には一目置いている。
 しかし、その提案は不自然だった。あれ、と少年は首をかしげる。

「確か、賭け事は好きじゃないって言ってたよね?」

『そう。だから、レースじゃない賭けよ』

 意味深に言葉を紡ぐチャットに、何だろうとリンクは瞳を輝かせた。妙に子供っぽいその動作は意図してつくったものなのだろうか。 チャットはそんな彼を尻目に、大胆不敵に言葉を続ける。

『ねえ、ゴーマン兄弟は優しい人だと思う?』


 ……。


 返事が、返ってこない。
 なかなか衝撃の台詞ではないかと自画自賛していた彼女は、やけに長い沈黙に不安になった。