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ベッドの上で抱きあう。キスを交わす。今度は舌も絡めて。シャーロットの肌はさらさらなのに、しっとりともしていて、最高に気持ちいい。ずっと溺れていたくなる。そのうちに堪えきれなくなって、押し倒す。あくまで優しく、だ。
下着の上から、シャーロットの体のすみずみまで、くぼみから盛り上がりまで、貪るように口づけをする。こんな状況でも、嬉しいという気持ちを抑えられなかった。どんな形であれ、シャーロットに尽くせることが俺の喜びだった。
シャーロットもぎこちないながら、口づけを返してくれる。時おり抑えた甘い吐息を漏らしながら。それだけで俺の本能はどんどん剥き出しになっていった。理性は遥か下方に置き去りにされ、動物の本能だけがぐんぐんと高みに昇っていく。我慢できず、熱くなった下半身の昂りをぐいとシャーロットに押しつけると、彼女はびくりと小さく身を震わせた。
「あ、ごめん……」
「いいの。ねえヴェルナー……触っても大丈夫かしら」
「……俺はいいけど……」
シャーロットが俺の下着を降ろそうと手をかける。その両手はあからさまに震えていた。こちらが申し訳なくなるほどだった。口では平気な素振りをしていても、気持ちはいっぱいいっぱいなのだ。
これから、彼女が知らないことを、もっとたくさんするというのに。
「ロッティちゃん……やっぱりもうやめておかない……?」
「馬鹿にしないでよ、これくらい私にだってできるんだから」
声のわななきを押し殺して、シャーロットが一気に下着を下ろす。
俺のものは充分大きく、硬くなっていた。薄暗い部屋でも、先走りで濡れ、太い血管が浮き出ているのが見える。奇怪でグロテスクな、男だけが持つモニュメント。
シャーロットが固まる。喉だけが動いてごくりと唾を飲み込む。
「見るのは初めて?」
「……近くでは」
「そう。……触ってみる?」
こくりと頷きが返ってくるが、緊張のためか、彼女の腕は糸の切れた操り人形みたいに動かない。俺はシャーロットの手首を優しく掴み、張りつめて屹立したものに導く。指先から彼女の速い脈動が伝わってくる。しかし俺も少なからずのぼせあがっている。何せ相手は大好きな相手なのだ。おあいこだ。
細い指がそこに届いたとき、電撃を受けたのかと思った。一瞬意識が吹っ飛ぶ。それほど強い快感が体を貫いた。こんなことは初めてだ。
シャーロットは強張りながら、どこか感心した風な表情を浮かべる。
「こんな、感触なのね」
「……硬いでしょ」
おずおずとした頷き。
「……それに、すごく熱いわ」
囁きと同時に、彼女の指の腹がゆるゆると表面を往復する。それだけで気持ちよくて、脳のヒューズが飛びそうになる。撫でさすられる感覚に、思考が熱で溶ける。興奮の血流で胸がはち切れる寸前に、シャーロットが脚のあいだにぐっと顔を寄せてきた。
「これを、咥えればいいんでしょう。どうやったらいいのか教えてね」
「え、ちょっと、待っ――」
彼女は躊躇なくそれを口に含んだ。
途方もない快感が、背中伝いに脳まで駆けあがる。
未曾有の感覚だった。きもちいい。それ以外考えられない。理性の残滓が弾け飛ぶ。真っ白く輝く悦楽の海に投げ出され、全身をふわふわした快楽の波が包む。肌の感覚がおかしくなって、あたたかい波間にゆらゆら浮いていると錯覚する。
気持ちよさでどうにかなりそうな頭で、必死にシャーロットのことを考える。彼女の問いたげな上目遣い。そうだ、やり方、教えてあげないと。
シャーロットの髪を撫でる。掌だけ、快楽の海から付き出している感覚。さらさら、ふわふわとした髪の触感。すべてが俺の脳内で快感に変換される。臨界点ぎりぎりだ。
「先端の縁のところ、舐めて……そう……奥まで、咥えてみて……歯が当たらないように……」
自分の声がひどく遠い。
ああ、ロッティちゃんの舌だ。ロッティちゃんの咥内だ。ロッティちゃんの吐息だ。俺のものはいま、シャーロットに咥えられている。夢みたいだ。
「きもちいい、きもちいいよ、ロッティちゃん……」
うわ言みたいに呟く。
瞼の裏にちかちかとまたたく光。俺の絶頂の予兆だ。
「離して、ロッティ……」
言いながら、シャーロットの頭を穏やかに押し返すが、彼女はなぜか離そうとしない。
「ロッティちゃ、……駄目だって……っ」
堪えきれなくて、そのまま達した。悦楽の海が巨大な波となって、何度も押し寄せる。シャーロットの口の中で、俺のものがびくんびくんと痙攣を繰り返して、どろりとした生臭い液体を吐き出す。
してもらっていただけなのに、息が上がっていた。シャーロットが、口内の白いものを、ごくんと嚥下する。俺は肩で息をしながら、彼女を信じられない思いで見る。
「――こんな味なのね」
「ごめ……」
「私が望んだことよ」
彼女の掌が、頬を優しげに撫でた。
絶頂に至ったばかりで霞がかる頭に鞭打つ。俺もしてあげないと、と自分を奮い起たせる。
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