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【マイルーム計画】3


モニターの中では見慣れている顔がこうして目の前にあるという事は、とてつもなく奇妙で違和感があるものだとエドワードは思った。

最初は呆けてアルフォンス・エルリックの顔を見つめていたが、徐々に込み上げてくる違和感に、自然と眉間に皺が寄ってきていたらしい。まして普段見慣れている方の顔はエドワードと向き合えば子供のように無邪気な笑みを浮かべるものだから、目の前の一目で愛想笑いと分かる笑顔にエドワードの眉間の縦皺が深くなるまで、そう時間はかからなかった。

「なにガン飛ばしてんだよ、用あったんだろ。まさか喧嘩?」

同級生に言われてはっと我に返り、エドワードは購買袋を両手にぶら下げたアルフォンスに近寄った。
まだ警戒しているので、慎重に。

「ジャンに、プログラミング詳しい奴がいるって紹介してもらって」
「あぁ、さっきハボック先輩からメールもらって聞いてます。あなたがカーティスさん?」
「うん、エドワード・カーティス。よろしく」
「僕はアルフォンスです、よろしく」

買い出し品を配りながら実習室を回るアルフォンスの後を追いかけつつ自己紹介を済ませると、学生の一人がアルフォンスに声をかけた。

「そろそろモーター動かしてもいいか?」
「あ、すいません。じゃあカーティスさん、こっちに」

エドワードの記憶が確かなら、実習室の奥の扉は準備室だ。普段は使われていないが、作業が立て込んだ時の為に予備の溶接ブースがあるため中は完全防音設備の個室。つまり密室だ。年中薄暗いから、映画なんかで殺人の犯行現場になりそうな雰囲気の部屋。そこまで考えてエドワードは悲鳴を上げた。

「やっぱホントは政府ぐるみの巨大な陰謀とかに巻き込まれてて秘密を知っちゃったオレはここで消されちゃうとかっ…!」

エドワードの今後の展開予想の後半は、実習室に轟いたモーター音でかき消された。

鼓膜を叩き破りそうな音量で鳴る爆音にエドワードは堪らず耳を塞いだが、それくらいで塞ぎきれる筈もない。竦み上がったエドワードは腕を取られ、抵抗する暇もなく準備室に引きずり込まれてしまう。
ドアを閉めてしまえば実習室の騒音は殆ど聞こえてこないが、まだ鼓膜が痺れている。あのタイミングで鳴り出した爆音、エドワードを準備室に引きずり込んだアルフォンスの手際の良さに、「実は機械科全員がNASAの工作員」という疑惑が浮かび上がった。


「…で、政府ぐるみの巨大な陰謀が、なんですって?」

準備室の厚みのあるドアに凭れて立つアルフォンスが、意地悪そうな笑顔でエドワードを見ていた。
その顔は見たことがある。少し眦の下がった優しげな目を軽く細めて、形良い唇の右端は少しだけ持ち上げる笑い方。エドワードを小バカにしている時のアルフォンスOSの顔とそっくり同じだ。



果たしてここから無事に還れるだろうか。
エドワードは、背中に冷たい汗が流れ落ちるのを感じた。


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