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 ベッドを椅子の代わりにして座るデイモンは膝の上に乗せたクロームの藍色の髪をゆっくりと梳いた。指の間をすり抜けていく滑らかな感触が心地よい。デイモンは彼女の頬に触れ、唇を撫で、滑らかな曲線を描くクロームの身体を順になぞる。クロームはされるがまま、デイモンの胸に頬をぴったりとつけて身体を寄り添わせている。「ヌフフ」と彼が特有の笑い声を漏らすとクロームは視線を少しだけ上げ、首を傾げた。普段の彼女と同じ仕草。しかし、そこに彼女の心は存在しない。光を失くしたアメジストがそれを教えている。
「クローム。お前は誰のものですか?」
「……私はデイモン様のものです……」
「ヌフフ、まったくもってその通りです。お前にとって私とはどういった存在なのかをその口で言って御覧なさい」
「……デイモン様に私の全てを捧げます……私の唯一の人、絶対的な存在……我が主……」
 クロームの言葉に満足したデイモンは声を上げて笑う。
「お前を何処の馬の骨とも知れない男になど渡してやるものですか。クロームに相応しい男は何世紀過ぎようと私だけなのです……お前も、そう思うでしょう?」
 その問いにクロームは迷うことなく頷いた。
「……はい、デイモン様……」

『前世、現世、来世』


(偽りの答えでもいい、今は)


20110328


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