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 草木も眠る丑三つ時、雲雀はサイドテーブルに置かれた携帯を手に取って、少し浮かせた状態で耳に当てた。雲雀に電話をかけてきたのはボンゴレファミリーのボス、沢田綱吉だ。切羽詰った様子で話す綱吉の声を聞きながら雲雀は斜め下に視線を移した。穏やかな寝息をたてるクロームの髪を梳き、シーツに浮かび上がった身体のラインを優しく辿る。シーツの下、一糸纏わぬ姿で眠るクローム。雲雀も同様。「分かった」と一言だけ返して通話を中断した。ベッドの下に落ちていた服を拾おうと手を伸ばすと同時に反対側の腕にクロームの手が触れた。ベッドの軋む音や振動でクロームを起こしてしまったようだ。
「きょ、や……おし、ごと……?」
 まだ眠そうな顔をしたクロームの頭を撫でると彼女は猫のように瞳を細めてすり寄ってきた。
「うん。こんな真夜中に電話をしてきて僕たちの睡眠を妨害するなんて……今度こそ、沢田を咬み殺して良いかい?」
「……だめ」
「分かってるよ」
 着替えを再開しようとすると止められた。クロームが何か言いたげな顔をして雲雀を見上げている。
「何?」
「恭弥、お仕事に、行く、前に……」
「うん」
 言い難そうに迷いながら言うクロームの頭を撫でながら優しく促す。こういう時に焦っていけないということを雲雀は知っていた。だから、待つ。
「…………もう一回……して」
 そうすれば、ほら、雲雀の欲しかった言葉が簡単に手に入る。
「君から誘ってくれるなんて珍しい……いや、はじめてだよね」
「あ、だめならい……」
「今更何言ってるの。僕をその気にさせたんだから、ちゃんと責任取って」
「あっ……」
 シーツを剥ぎ取って、柔らかい彼女のナカにその身を沈めた。


『誘う』


20110122


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