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「クローム」
 名前を呼ばれてクロームは、辺りをキョロキョロを見回した。だが、見渡せる範囲には誰もいない。
「空耳……?」
「空耳ではありませんよ」
 首を傾げたクロームの言葉に答える声。声は少し上から聞こえて来ているような気がしたので、クロームは視線を上に向け、もう一度辺りを見回した。そして、あ、と小さく声を上げる。
 赤いチャイナ服にみつあみと雲雀をずっと小さくしたような容姿。
「風!」
「フフッ、やっと見つけてくれましたね」
 悪戯っぽく笑う風。嵐のアルコバレーノ。
「どうしたの? お散歩?」
「いえ、今日が貴女の誕生日だと聞いたので、これを渡そうと待ち伏せをしていたんです」
 もみじのような小さく可愛らしい手の上にあるのはプレゼント。
「ありがとう」
 ふわりと笑うクロームに微笑み返した風は「それともう一つ」と言ってクロームの肩に飛び乗った。
 クロームが風の方へと顔を向けると、それを見計らっていたかのようなタイミングでちゅっ、と可愛らしいリップ音が響いた。
「これも、プレゼントです」
「……っ!」
「そんな風に可愛い顔をされると、もっとしたくなってしまいます」
 頬を真っ赤に染めるクロームに風は再び顔を近づけたのであった。


『あかいいろ』


20161205


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