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「……おい」
 低く威圧的な声がクロームの名を呼んだ。その声を聞いたのが普通の人間であれば恐怖で凍りついただろうが、クロームは、不思議そうに小首を傾げただけだった。
「どうしたの、XANXUS」
 名前を呼んでから何も言葉を発しないXANXUSに今度はクロームから語りかける。XANXUSは、口を開け、閉じ、そしてもう一度口を開いてからようやく一言だけ言葉を発した。
「……やる」
 赤い包装紙に黒色のリボンがかけられた小箱がその手の平に乗っていた。いつも自分の誕生日を忘れてしまうクロームだが、今日は朝から沢山の人からプレゼントとお祝いの言葉を贈られていたので、XANXUSの差し出すそれが誕生日プレゼントなのだということに流石のクロームも気がづいた。暴君として有名なXANXUSだが、クロームの誕生日には毎年必ずプレゼントを用意して、彼なりの気持ちを伝えてくれる。
「いつもありがとう」
 クロームが言うと、微かにXANXUSの表情が和らいだ。それは、他の人には分からないような本当に微かな変化だが、クロームにはしっかりと伝わっていた。


『君にさえ伝われば』


20151205


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