にゃんこシリーズ | ナノ

 猫の耳と尻尾が生えてしまった事件以来、クロームは自室に篭り切りだった。今思えば、京子とハルにならこのことを打ち明けておいてもよかった気がする。余計な心配をかけたくなかったのもあるが、何だか恥ずかしかったのだ。クロームは二人に話したいことがあるから部屋に来てほしいという内容のメールを送った。メールの返信があって数十分たった頃、ドタドタと外が騒がしくなって、扉が開いた。
「クロームちゃん! 大丈夫?」
「ツナさんはクロームちゃんが病気だ、と」
 部屋に入って来たと同時に二人は、言葉を切った。否、切らざる得なかったと言うべきか。
「ごめんなさい……。私、こんな姿になっちゃって、お部屋の外に出ることができなかったの……」
「それ、本物なの?」
 京子の問いにクロームは頷いた。科学班の人たちが作った薬の効果なのだと二人に説明する。
「アンビリーバボーです」
「確かに、これじゃあ出掛けられないね。でも、病気じゃなくてよかった」
 クロームが元気そうで二人は安心したようだ。

 久しぶりの会話は弾む。それから少しして京子がこんな提案をした。
「ねえ、ロングスカートと帽子で耳と尻尾を隠せば、少しなら外に出ても大丈夫なんじゃないかな?」
「そうですよね。少しは外に出ないと本当に病気になっちゃいますよ」
「これから三人でピクニックに行かない? 人があんまり来ない場所で」
「京子ちゃん、グッドアイディアです! ね、クロームちゃん、行きましょう!」
「うん。楽しそう……」
「それじゃあ決まり! お弁当じゃなくてお菓子を持って行こうよ。外でお茶会、きっと楽しいよ」
「ハル、家に美味しい紅茶があるんです。それも持って行きましょう」
「私たちは準備をしてくるからクロームちゃんはここで待ってて。準備が出来たら迎えに来るね」
 クロームは頷いて、二人を見送ると猫の耳と尻尾の隠せる服に着替えはじめた。久しぶりに外の空気を吸えると思うとうれしくなって頬が緩む。何より、二人の気持ちがうれしかった。


「クロームちゃん、改めて、誕生日おめでとう!」
「ありがとう……っ」
「こうやって外でお祝いするのも良いですね」
「うん、すごく、たのしい」
 クロームの笑顔を二人は満足気に見つめた。


20121205 『子猫、ピクニックに行く』


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