にゃんこシリーズ | ナノ
 目を覚まして最初に見たのは、心配そうに私の顔を覗きこむ二人の姿だった。
「ん、むくろ、さま……きょう、や?」
「やあ、身体は大丈夫かい?」
「へい、き……」
「このまま朝まで起きないかと思いましたよ。……無理をさせましたね」
「……大丈夫、です」
 二人に言われたことと、身体のだるさや痛みで眠る前のことを思い出した。途端に顔が熱くなる。はずか、しい……。
「本当はこういう予定ではなかったんですよ」
「何、僕のせいだって言いたいの?」
「それ以外に理由がありますか? 間に合うようにと任務を早めに片付けて来たのに」
「骸様、何か用事でもあるの……?」
「ええ、とても大切な、ね」

 骸様に支えられてベッドから身体を起こす。恭弥に時計を見るように言われて、壁に掛けられた時計を見ると、長い針と短い針が12の上で重なろうとしていた。あと15秒、10秒、5、4、3、骸様が時計を見ながらカウントダウンをはじめた。
 あと少しで何が起こるの……?

「2、1……クローム」
「はい」
『誕生日、おめでとう(ございます)』
「……あ、」

 二人の声が少しずれながら重なった。日付が変わって12月4日が12月5日になった。わたしの、誕生日に。

「一番に君に伝えたかったんだ」
「おや、僕が一番でしたよ」
「違う。僕の方が先だった」
「いいえ、僕です」
 どちらが先におめでとうと言ったかという言い争いをしている二人を見ていると携帯が鳴った。途切れては、また。メールを開くとたくさんの「誕生日おめでとう」私が好きなネコの絵文字がついたメールは女の子たちから。この姿になってからの数日、ネコの耳と尻尾を隠すために部屋に篭っていたけれど、朝になったらみんなにお礼を言いに行こう。

「骸様、恭弥……ありがとう」
「こちらこそ。生まれてきてくれてありがとうございます」
「記念日になんて興味はないけど。今日だけは僕にとっても大切な日だからね」


20101205 『子猫の誕生日』


- 5 -


[*前] | [次#]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -