▼4月
▽入学式翌日
「おはよう苗字さん」
『えっ、あ、おはよう赤司くん』
「…昨日も気になったんだけど、オレに声をかけられるのはそんなに驚く?」
『えっ』
「気のせいだったらすまない」
『あ、ううん。あの…私、影が薄いみたいで…あんまり人に気付いてもらえることがなくてね…だからこんなふうに声をかけられることに慣れてないんだ。ごめんね』
「そんな、謝ることはないよ。嫌だったのかと思って少し心配になっただけなんだ」
『嫌だなんてことないよ! 見つけてもらえるの、嬉しいから、気にしないで』
「! そう…ならよかった。安心したよ」
『変な気遣わせてごめんね』
「いや。ところで昨日、バスケ部で見かけたけれど、マネージャー希望だったのかい?」
『えっ』
「…それも驚くこと?」
『いや、だって、話しもしてないし、私離れたところで見学してただけだし…あれだけ離れたところにいて気付かれてたなんて初めてだよ…』
「そこまでなんだね…」
◆
委員会決め
「苗字さんは委員会には入らないの?」
『うーん、やったことないかな。小学生のとき立候補したことあるけど、手を挙げても気付いてもらえなくって』
「手を挙げても? 本当に?」
『…やってみようか?』
「…うん」
「女子は誰にする〜? 立候補とかいないか〜?」
『……ほら、ね。気付かれないでしょ?』
「すごいな…。先生、苗字さんが立候補してます」
『えっ』
「お、そうか。気付かなくてごめんな。じゃあ女子の学級委員は苗字でいいな?」
「はーい」
『えっ、あ、赤司くん…』
「そんな顔しないで。一緒に頑張ろうね」
◆
練習終わり、下校時
「え、学級委員ですか」
『うん…』
「委員会なんて今までやってこなかったですよね…? 何かあったんですか?」
『まんまと策にハメられた感じ…』
「策?」
『いや…うん、何でもない! なっちゃったものは仕方ないし、頑張る』
「ふふ、そうですね。頑張ってください。名前なら大丈夫ですよ」
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