鳥のさえずりと雨の音が遠くのほうから聞こえる。
まどろんだまま寝返りを打とうとすれば腹の辺りに温もりを感じて重い瞼を開けることになった。


『テツ…くん…』


ぼやける視界に映ったのはすやすやと寝息を立てるテツくんで、私はゆうべ彼が泊まりに来たことを思い出した。翌日に寝坊しても支障のない日は必ず、テツくんはうちに泊まりに来る。


「ん…」

『テツくん…?』


不意に身じろいだテツくんが起きたのかと思って声をかけたが、どうやらまだ夢のなからしい。


「名前…」


腹にある温もりがもぞもぞ動いて、私はようやく、それがテツくんの腕であることに気付いた。そっとその腕を撫でてから、テツくんの顔に目を向ける。
彼の鼻先に落ちた涼しげな色の細い髪が呼吸に合わせてふわふわ揺れていた。それを見ていると、無理にこじ開けた瞼がまた重くなってきて、私は抗うことなく目を閉じた。


『おやすみなさい』





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