「まさかこんな再会になるとは思わなかった」


席に着いたローくんは私のことをじとっと見つめてそうこぼした。
恨めしそうな視線に少し後ろ暗い気持ちが込み上げる。まるで悪いことをしているのをママに見つかった子供みたい。


『それは私も一緒だよ。帰って来てたなんて、どうして連絡くれなかったの?』

「ああ? 黙ってアドレスも番号も変えた奴が何抜かすんだ」

『え? ……あっ』


言われて、ローくんがこっちを発ったあと、携帯を水没させてしまったのを思い出した。データはすべておじゃん、何も元に戻すことはできなくて、メールアドレスや電話番号をまるっと変えたのだ。


『ご、ごめん、すっかり忘れてた…』

「そんなこったろーとは思ってたよ」

『面目ない…』


名前ったらありえなーい、隣に座る友人たちに笑われ、頬を掻く。いやほんと、我ながらありえない。ローくんは大事なお兄ちゃんなのに。


「まーまー、とりあえず乾杯しましょー、ねっ」


運ばれてきたビールを片手に、シャチくんが声を上げた。
ペンギンくんや友人たち、そして私もグラスに手をかけたのを見て、ローくんも半ば渋々と言う感じだったけれど、グラスを持った。


「今日の飲み会と、ローさんと名前ちゃんの再会に! カンパーイ!」

「カンパーイ!」





「いつもこんなになるまで飲むのかてめえは」


頭の横でローくんの低い声が響くのを聞きながら、ふらつく足を何とか地面につけて歩く。


『いや、いつもはそんな飲まないよ』

「…酒臭ぇ」

『すみませーん』


飲み会はすこぶる楽しくお開きになり、帰る方向の同じな友人ふたりは、ペンギンくんとシャチくんが送ってくれることになって、私はローくんと帰ることになった。ふたりで帰るのなんて、ほんと、何年ぶりのことか。


「ったく…解散した途端これかよ…さっきまで素面同然だったろ…」

『そうだったっけなあ…』


店先で4人を見送って、いざ帰途へ…ついた途端、妙に酔いが回ってきて、今はもう完全に、傍から見れば足元も覚束ない酔いどれ状態。ローくんに肩を貸してもらわないと側溝に足を突っ込みかねない危うさだ。
でも…ローくんには迷惑極まりない話だけど、久々にすごく気分がいい。
仲のいい友達と飲んでもなかなかこうは気持ちよく酔えない。今はもう、あの人と飲んだって絶対こうは酔えないのに。


『ローくんがいるからかなあ』

「あ? おれが何だって?」

『いやね、ローくんがいたから、こんなに気持ちよく酔えたのかなあって。ローくんがいてくれるなら、酔っても大丈夫でしょ』

「……そーかよ」


肩に回された腕に少し力がこもったような気がした。
だけど私はしたたかに酔っていたものだから、どうして力が入ったのか、不思議に思うこともなかった。
心地よく酔いながらも、頭のなかに浮かぶのは大好きなあの人のこと。私ごときに予定を蹴られた彼は、今頃何をしているだろうか。



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