「ああ、痛くてたまらないねィ」

「くっくっ…、そうか。どうだ?俺がほどいてやろうか?」



俺が、と言う辺りがウザくてたまらない。でもここは我慢だ



「頼みまさァ。もう背中が痛くて痛くて…」

「仕方ないな。まあ俺はもともと人道的な奴だし、こういうのは好きじゃない」

「すまねえですねィ」



早くほどけ、という言葉を飲み込んで俺は手ごと縛られている縄を切ってもらうために、野郎に背中を向ける。くそっ、仕方ないとはいえ屈辱的だ



「しゃあねぇなあ…」



そう言いつつもにやけてんぞ気持ち悪い。野郎はスッ、と懐から短刀を取りだし縄を切り出した。って、いてて。おいコラもっと丁寧に切りやがれ



「おっと悪い、つい切れちまった」

「構いやせんぜ」



よーし、こいつ絶対殺す。必ず後でぶっ殺す。今のわざとだろ。わざと手切っただろ。よーし、殺す。覚悟しとけ。くそ野郎が

その時、パラパラというなにかが散る音が聞こえて今まで感じていた体を締め付ける感じがなくなった。やっとほどけたのか。おせえな



「ほら、ほどけたぜ。まあ牢から出しやしねえが。どうせその怪我なんだ。大人しく……って、ん?」

「こんな傷、怪我の内に入らないでさァ」


ドゴッ!!


「な……、ゴフッ!」

「そんな敵に甘くしているようじゃ早死にしますぜ」



隙だらけだった野郎のわき腹へと取り合えず膝蹴り。
ドサッと音がして野郎は崩れ落ちた。ざまあ見ろ。


まあでも、これでとにかく俺は自由だ。背中の痛みにも馴れた。鈍い音をさせて牢を開ける。鍵が差しっぱなしとかどれだけ甘いんだよ。気、抜きすぎだろ。そして辺りを見渡せば、おっ、あった。刀だ。少し安もんだがまあなんとか使えるだろう。俺は取り合えずその刀を腰に差した。


































































さて、逃げ出したはいいがここからどうする?


今、この船は宇宙空間にいる。外に逃げ出そうとしても酸素が無いから死んじまう。
そうだ、もうすぐ星につくとか言っていたから、船員とかが全員降りてから勝手に地球に帰ってやろうか。いや、でも俺船の運転出来ないしな。さて、どうするか

そんなことを考えていたら、ふと人の声が聞こえた。急いで物かげに身を寄せる。様子を伺いながら声が聞こえるほうへとバレないように視線を移せば、数人の野郎が喋りながらこちらへて歩いてくるのが見えた。
見つかる、かと思ったがそいつらはすぐ横の部屋へと入って行った。ふう、アブねえ


少しその部屋に近づいて話し声を聞く。話の内容からしてどうやらここはこの船を操縦しているところらしい。
もうこいつらを脅して地球まで連れていってもらうか。多少無理があったがそれ以外に帰れる方法が浮かばなかった。どうせあの生き残りがいるとかいう星についたら帰れないんだ。やるなら今……




グォンッ!!


「うぉっ!」


「っ……!?誰だ!?誰かいるのか!!」




しまった。2つの意味で。突然襲った大きい地面の揺れ。反射的に叫んでしまった。くっ、そういえば着陸するときに揺れるとか言ってたな。もう着いたのか?しかし窓から見える景色は青空一色。ん?青空一色?そうか、大気に入ったのか。今のはその揺れか。つまりまだ着陸はしていないが星には入ったということか。



「なっ!!おい、貴様!!どうやって牢を抜けた!!」



どうやら見つかったみたいだ。見つかったのなら仕方がない。俺は刀を抜いて部屋へと転がりこんだ。

操縦する機械らしきものが埋め尽くす室内。敵は6人。騒ぎになるまえに片付けなければ。
まあ丁度いい。操縦士らしき奴だけ生かしておいて地球まで運転してもらおう。操縦士に刀を突き立てたら他の奴らもさすがに手出しは出来ないだろう。

でもその前にまずは何人か殺さなければ。こっちの刀を見て自らの刀を抜いた奴が4人。怯えつつも機械を操る奴は2人。この2人が操縦士か。じゃあ間違って殺さないようにしないとな。


先に動いたのはあっちだった。こっちから見て右手側から斬りかかってきたので取り合えず受ける。そしたら今度は左から。とっさに相手の足を払い受けていた刀を弾き、首を掻き取るために刀を振った。まずは一人。そう思った。


しかしそうはいかなかった。


やはり使い馴れていないのもあるのだろう。この誰のか知らない刀は安もんなだけあって、いつも俺が使っている刀より軽かった。簡単に言えば、予想以上に太刀が早く動いたのである。

必要以上に素早くなった太刀は相手の首をとることなく空振りをして、そして、あの、まあ、操縦用の機械を大きく切り裂いた。しまった。


と、同時に慌てふためく操縦士。煙があがる機械。船はバランスを崩したのか急にぐらつく地面。くそっ!


パリーン!!


明らかに機械がおかしい。反射的に俺は窓を突き破って外へと飛び出した。そして数秒遅れて、


ドーン!!


花火のような音が聞こえた。しかしこんなところで花火が上がるわけがない。パラパラと辺りに降る火の粉が振り向かずとも状況を物語っていた。やっぱり爆発したのだ。間一髪、俺は巻き込まれずに済んだのだ。



しかし新たな問題が1つ。窓を突き破ったのはいいが船から地上までの距離がまだまだあった。一気に体を襲う重力の力。凄まじい風に目が開けられなかった。ジェットコースターなんて比べ物にならない。






くっ、そ……、こんなところで死ぬのか……、俺は……






ゴォォォォッ、と耳の横で風が駆け抜けていって、体中にかかる重力により意識が遠のいていった。



嗚呼……




続く→


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