至って普通の女の子。クラスにいても目立つことはなく、男子に名前を覚えてもらえているかも分からない女の子。それがクラスの中でも私って人。


でもね、


「神威さん、またケンカですか?」

「んー?ああ、まあケンカとも呼べなかったけどねー」


不良たちの間で恐れられていて、ケンカが誰よりも強い夜兎校の番長、神威さん。そんな噂をされる神威さんと私は、実は友達なのです。


「ほら、傷口見せてください」

「別に平気だけどなー」


神威さんと私の出会いは、私が神楽ちゃんとお友達になった時。始めて神楽ちゃんちに行ったら、そこにはケンカ番長と呼ばれる神威さんがいた。
最初は怖かったけど、話してみると意外と優しくて気さくな人だった。


「染みませんか?」

「うん、平気だよー」


私の将来の夢は医者になること。だからこうやって、ケンカをして傷を負う神威さんの治療をして予行練習じみたことをさせてもらっている。
神威さんは私の夢を知っている上で協力しているから本当すごい良い人だ。

神威さんは強い人と戦うのが好きで、だからケンカをするそうだ。いつも大人数を相手にケンカをして、そして絶対に負けない。そんな誰よりも強い人が私なんかと友達でいいのかなー、といつも思う。でも神威さんはそんなこと全く気にしていなくて、私はそれに甘えているだけ。


「ねえ、」

「はい」

「…今日さー、うちに来ない?」

「?今日は神楽ちゃんと遊ぶ約束はしていませんよ?」

「あー、関係なによ。どうせ神楽はそこらで買い食いしてるだろうし」


神威さんからの始めてのお誘い。こうやって神威さんから遊びに誘われるのは本当に始めてだから、少し、いや、かなり嬉しい。


「よし、じゃあ行こっか」

「え、ちょ、まだ治療が」

「もう大丈夫だよ」


そのまま私の手を引っ張って走り出す神威さん。確かにここから神威さんの家は遠くないから走って行ける距離だけど、ちょ、足速い!
私は足がもつれないように必死になりながら神威さんの後をかけていった。




















「おじゃましまーす…」

神威さんの家(神楽ちゃんの家でもある)には誰もいなかったけど、一応あいさつをした。神威さんたちのお母さんは若くして亡くなったらしく、今はお父さんが働いているらしい。

バカ兄貴は基本どっか行ってるから、家には基本私一人アル。だから友達として来てくれて嬉しいネ!

神楽ちゃんと始めて神楽ちゃんの家で遊んだ時に、嬉しそうな顔をしながら言ってくれたのを今でもよく覚えている。まあ、その時はたまたま神威さんが家にいたんだけれども。


「まあ、そのへんに座ってよー」

「あ、はい」

「よいしょー」

「…!」

「ん?」

「いや…、あの…、神威さん、」

「何?」

「顔…」


顔、近いです…。


恥ずかしかったけどそう伝えたら神威さんは更に顔を近づけてきた。ちょ、本当に近い。冗談じゃないぐらい近い。てかこんなに広いリビングなのに、こんな至近距離にいる意味って一体何?
どのくらい近いかと言えばもう数センチで鼻先と鼻先がぶつかるぐらいに。


「ほんとにさ、」

「は、はい…?」

「君って、」


そこで一区切りつけたかと思えば、神威さんはグイッと顔を耳元に近づけてきて小さく低い声で囁いてきた。

そしてその言葉の意味を理解した瞬間、顔が火照るのを感じた。




鹿
(本当、何で気がつかないのかな)




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sweetsweet様に提出

始めての企画サイト様への参加、楽しかったです^^


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