※隊士設定
『隊長、見回りですよ』
スースーと心地良さそうな寝息を立てながら眠っている人を起こすのは少々気が引ける。不気味なアイマスクで目もとは覆われているが、おそらく素敵な寝顔をしているのだろう。
真選組最年少にして一番隊の隊長を任されている、私の上司の沖田総悟はまさしく今、自室で爆睡している。今日は私と見回り当番なのに。サボり魔め。
『隊長ー』
そう呼んでツンツンとつついてみるが起きる気配はなし。どうしたものか。この状況は。そりゃあ私だって仮にも一番隊の隊士だ。真選組に所属している以上は市民の安全を第一に考えなければならない。つまり市民の安全のための市中見回りを第一に考えなければならない。市中見回りの時間はもう迫っているのだ。寝ている隊長はほっといて1人で行けば一番いいのだろうが、それでは私が副長にはっ倒される。むしろ殺される。だから隊長をほっといて行くわけにはいかない。
しかし隊長は真選組一の剣の使い手であると同時に、真選組一のドSだ。それはもうあの局長や副長でさえ手をやくぐらいのドSだ。私が下手に起こそうとすればどうなるか分かったもんじゃない。絶対に後々尾を引くぐらいの何かをされるはずだ。てかされるに決まってる。
ほっといて見回りに行くのも駄目、変に起こして殺されかけるのも却下。さて、どうするものか。まさしく究極の2択。てかどちらを選んでも無事ではいられない気がする。
でも、私だってこの一年間伊達に隊長の下についてきたわけではない。こういう時の対処法など心得ているつもりだ。ほとんどは山崎さんから受け継いだ対処法ではあるが。
こういう時に取る手段はたった1つ。
『隊長、私1人で行きますからね』
ドSに殺されかけるより副長にどやされる方がマシ。まあ副長に殺されるのかもしれないが。それはそれで際どいな、おい。
とにかく私はさっさと隊長の部屋から出ることにした。ピシャッと後ろ手にふすまを閉める。これがこの状況での一番の対処法だ。ましてや今日みたいに特別な日には最善の対処法でもある。
そして私は廊下の隅に置いていた小包を手にとった。
「…暑、」
じめっとした暑さで目が覚めた。頭がボーッとする中なんとか体を起こす。梅雨独特の暑さで体はじっとりと汗ばんでいた。
頭が徐々に覚醒していくと同時に、自分が結構長い時間寝ていた事に気がつく。昼寝のつもりで寝たのだが時計を見ればもう4時を回ろうとしていた。
ああ、そういえば今日は昼から見回りだったっけな。サボっちまった。また土方さんにどやされる。まあ別にどやされたからってどうという訳ではないが。まあ今さらどうこうで出来る問題ではないし、見回りだってどうせ今日当番の隊士が行ってんだろ。…、って
あ。
確か今日の見回りは俺と中田だったな。俺と、中田、の2人だったな。
中田は真選組唯一の女隊士だ。あいつは女とは思えないぐらいガサツで性格はとてもあっさりしている。黒い短髪に鋭い眼光は、紅一点という言葉をはねのけるようにいつも凛としていた。
その雰囲気に引かれたのか何だか。入隊して半年。無理を言って監察から一番隊へと引き抜いたのだ。それが今から一年前になる。
この時間なら、中田はもう見回りに行き終わった後だろう。寝ている俺を置いて、1人で。何だか少し惜しいことをした気分になった。
ただ、ボーッとしていても何も始まらない。暇潰しにでも中田に会いに行ってやるか。逆にとらえれば、あいつはもう見回りを済まして屯所にいるということになる。探せばすぐに見つかるはずだ。ちょっと遊んでやろう。
そう思いながら、ふすまを開けた。
「…」
『あ、』
「…何やってんでさァ」
確かに俺は探せばすぐに見つかるはずだ、と思った。だがこんなにすぐに見つかるなんて予想外だった。
ふすまを開ければ、すぐ横で体育座りをしていたなんて誰が予想するだろうか。
『隊長、やっと起きましたか。お早うございます』
「お前、見回りは」
『サボりました。副長に殺されますね』
「は?」
仕事優先、任務第一のこいつがサ ボ り?どういう風の吹き回しだ。てか何のためにサボった?サボったってことはずっとここに居たってことか?俺を待ってた?いやいや、ないないないない。それはない…でも。
「お前いつからここにいたんでィ」
『見回りの時間からです』
「何のためにでさァ」
少しは期待したっていいんじゃないか。
『隊長のためにですよ』
そう言って立ち上がると中田は俺に小さな小包を渡した。
『誕生日おめでとうございます。沖田さん』
何よりも
(覚えている事が嬉しい、だなんて絶対に言ってやらねェ)
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お誕生日おめでとう!
意味分からない文ですんませんorz
要するに2人は両思いってことです、はい
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