『へえー…』

「ちょっとは信じたかィ?」

『うん、よく分からなかったけど微妙に』



何から話せばいいかよく分からなかった。だから俺はあくまでも簡潔に必要なことだけ答えた。地球から仕事で船に居たこと、正体がバレて急いで窓から外に飛び降りたこと、別にお前が目的でこの星に来たんじゃないということ。それだけを分かりやすく伝えた。こいつにちゃんと伝わったかどうかは分からないが。

全部理解したのかはどうかはともかく取り合えず俺が敵ではないということは分かったようだ。今この星にいる人間はこいつと俺だけ。殺しあっている場合じゃない。


大体俺はこれからどうすればいい。どうやったら地球に、真選組に戻れる?ふと、頭の中をその事がよぎった。しばらく待ったら異変に気づいた仲間が助けに来るだろうか。いつまで待てばいいのだろうか。俺は無意識に天を仰いだ。



ポツリ

『あ、』



水。また水だ。その水は何粒か降ってきて地面や俺のでこに当たった。一瞬こいつの力かと思ったが違う。それはただ純粋に空から降ってきた。単なる自然のもの。



『雨、降ってきちゃった』



ポツリ、ポツリ、とその雨粒は地面に小さな水玉模様を作って行った。空は鈍い灰色の雲に覆われている。これはしばらく降るな。



『ねえ、どうする?』

「…なにが」

『私は一旦家に戻るけど、一緒に来る?』








































『へぇー、凄いいっぱい人がいるんだね。チキュウって』



あれから数刻。あのまま雨に当たり続けるといる選択肢を選ぶはずもなく俺はこいつの家に来ていた。家というからどのようなものかと思い来てみればただの洞穴。確かに雨は防げるが少なくとも家、とは呼べない。

雨はだんだん強くなる一方でこの洞穴に着いた頃にはどしゃ降りとなっていた。取り合えずぐしょ濡れになった上着を脱ぎ側の岩へとかけた。随分自然丸だしな家じゃねえか。


目の前にいるこいつは濡れた服も気にすることなくただちょこんと座っていた。乱雑に肩で切り揃えられた綺麗な銀髪。すそとそでがボロボロに切り裂かれている服。まるで野性そのままだ。

ずっと座っているのも退屈ですることがない。それはこいつも同じらしく、暇潰し代わりに自然にお互いのことを話し始めた


こいつは自分を佐奈と名乗った。恐らくはこんな日本語で表せるような名前じゃないのかもしれないが、そう聞こえたのでそう呼ぶことにする。佐奈、のほうがいかにも地球らしくて俺にとっても呼びやすかった。



『オ、キタ、さん?』

「なんつー、発音してんでィ」

『なんか言いにくいよ』

「んなことあるかよ。…で、お前はここに1人で住んでるんですかィ?」

『うん。まあたまに人は来るけどね』

「(調査船とかのことか…)そんで来た奴は全員殺してるってわけか」

『だってー、最初来たときに急に撃ってきたもん。私びっくりしちゃった』

「びっくりって…、バカかお前」

『バカじゃないよー。それになんか私を捕まえようとしたからさ』

「そりゃあもう水狐一族が居ないって言われてるからでィ。単に珍しがってるだけでさァ」

『あー…、そうか。そういえばそうだったっけ』

「…てか、そういう話題を出された時は普通少しは悲しむモンでさァ」

『なんで?』

「だってあんた1人なんだろ?寂しくねえのかィ」

『んー、もう馴れたからねー。寂しいとかは思わないかな』

「へっ、ガキのくせに気取りやがって」

『ガキじゃないもん』

「嘘つけ、いくつでさァ」

『えーっと…、15、16ぐらい…?』

「充分ガキでさァ」



違うもん、そういって佐奈は頬を軽く膨らませた。話しやすい。話していて単にそう感じた。まるで昔からの知り合いのように、今日会ったばっかりなんて嘘みたいに。


しかしこれからどうするか。真選組から向かえが来るまでここで待つか。いや、でも、それはいつになるかは分からない。元々長期に渡る任務だ。しばらく帰ってこないからといってすぐに向かえが来るわけでもない。もしかしたら行き先が一般的に魔の星と呼ばれるこんなところだと知ったらもう死んだと勘違いをされる可能性もある


さて、どうするか



『?どうしたの?』

「いや、…。なあ、」

『なに?』

「ここから地球に帰れる方法とかねえかィ?」

『帰りたいの?』

「当たり前だろィ」

『んーと、じゃあよく船が来るからそれに頼んで乗せていってもらえば?』

「…それだ」



そうか、その方法があった。ここにはしょっちゅう船が来るのだ。1つや2つぐらい地球、又は近くの星の船も来るはずだ。特に期待はしていなかったが一応聞いてみてよかった。ここに住んでいるこいつにしか分からない盲点と言うやつだ。



「なあ、船って次いつ来るかわかるかィ」

『えっ、そんなの分かんないよ』

「そういう意味じゃなくて。大体どれぐらいで来るかなら分かるだろィ?」

『あ、えーと、大体10日に一回ぐらいは来るよ』



10日。かなり先のように感じるけど、それでも帰れる希望があるだけましか。まあ別に地球の近くの星の船というわけじゃなくても最悪、無理矢理進行方向を替えてもらえばいいだけの話だ



「と、いうわけでしばらく世話になりまさァ」

『えっ。…あ、そうか』



まあ帰れる方法も分かったことだし、たまにはこんなド田舎でのんびりするのもいいだろう。



続く→


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