ペチペチ、と頬に軽い刺激が伝わった。体がぼおっとしてうっすらと目に光が入ってくる。と、同時に体にくる重み。あれ?俺、
ギシッ、と体が軽く軋むのを無視して手を顔の前に持っていく。動く。ちゃんと動いている。それに感覚もある。ああ、そうか
「生、きてる……?」
『えー、生きてるけど?』
なっ、誰だ?誰かいる。視線を声のするほうへ向けたら、女?ちっこいくりくりしかガキがいた。しかし安心は出来なかった。こいつ、ただ者ではない。体が反射的に飛び退き距離を置いた。なぜか刀まで構えてしまう。なんでだ、こいつはただの子供なのに。
「……、」
『?』
聞きたいことは色々ある。お前は誰だとかここはどこだとかなんで俺は生きているとか船はどうなったとか。でも逆に色々ありすぎてどれから聞けばいいかが分からない。なんだ、何がどうなっている。
『ねえ、』
「っ、」
声をかけられて一瞬体が強ばる。って、だから俺は何をやってるんだ。子供に対して情けない。
とても透き通った声だった。子供っぽいと言えばそれで片付いてしまうが人を聞き入らすような不思議な声だった。
『私を捕まえに来たの?』
「……は、」
何を言われたかその言葉を飲み込むまで時間がかかった。あ、言葉通じるのか。じゃなくて。
捕まえに?どういうことだ。なんで俺がお前を捕まえるんだ。大体俺らは初対面…
そこまで考えて俺はある1つの結論にたどり着いた。考えてみればどうして俺は気がつかなかったのだろう。普通に考えてこんな山奥に子供がいるはずがないじゃないか。お前は誰だとここはどこだという答えにも通じる結論。つまり、こいつは、
「お前が……、伝説の…」
『あ、やっぱり捕まえにきたんだ』
ズサァァァアッ!!
「っ!!」
『……』
俺がそう聞いた瞬間こいつの目付きがかわった。とっさに刀で身をかばう。向かってきたこいつは手応えなく斬れる。顔に何が冷たいものがついた。これは…、水?
それはうねっていた。その水は龍のように太く長く凛々しく猛々しかった。そしてさらにうねる。その水龍はまるで生きているかのようにこのガキの手にまとわりつきそして連動している。手を右に振れば龍は左から右へと駆け抜けた。刀で受けるがそれはあくまでも水なので辺りに飛散するだけ。そしてその飛散した水は再び集まりそしてまた龍へと形成る。
そうだ水だ。思い出した。ニュースでやっていた伝説の一族とはかつて水を司ると言われた水狐一族。自らの体を形無い水へと変えることが出来る人外の力。
急いで斬りつけたはいいが相手は水。斬っても全く意味はない。そうか、今までこの星についた船が戻って来なかったのはこいつが全員、殺、
「っ!違う!俺はお前を捕まえに来たんじゃねィ!」
『え?』
手から溢れ出していた水が止まった。水で出来た龍もまるで何事もなかったかのようにその場から消える。そこに残ったのはきょとんという擬音を引き連れたたった一人の少女だけ。
『違う?』
「はぁ…はぁ…、ああ、俺はお前を捕まえに来たんじゃねえ」
『そういってウソだった人今まで何人もいたよ』
「違いまさァ。取り合えず話を聞きなせえ…」
続く→
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