今日は雨かな…


そう思って空を見上げた。重い空気、濃い灰色がかった曇天、湿気っぽい匂い、あー、雨だ。

雨かー…、じゃあもうそろそろ家に帰らないとなー。せっかく遊ぼうと思って川まで来たのに戻らないと。この近くに雨を防げるような場所はなかったし、仕方ないかな。

ゴロゴロと低く空がうなった。あ、ヤバイ。これはいっぱい降るぞ。早く戻ろ。



ドーン!!



ん?何か音が聞こえた。とっても大きな大きな。雷かな?いや、違う。音がするほうに視線を向ければ、何かが燃えている。あれは、船?あぁ船、またか。

最近何かしょっちゅう船が来る。なんでかなー、なんか特別なことしたっけなー。うーん…


まあいいか。もう燃えちゃってるし私が壊しに行く必要もないし。うん、なんかよく分からないけど手間が省けたしラッキーラッキー。


って、あれ?


何か見える。降っている。あれじゃなくて、火の粉とかじゃなくて。

その瞬間、私は走った。草木を掻き分け地面を蹴って森を縫って。いくらこのへんにはめったに来ないといってもさすがに走ることぐらいは出来る。ここは普段来ないところなので道がない。だから正確に言ったら走ったんじゃなくて木にぶら下がったりしたんだけど、でも今はそんなこと言ってる場合じゃない


助けないと、死んじゃうよ









































ドサァァァァァァァアァアァ!!!!















































間、に合った?


あ、間に合った。…良かったー。

木にぶつけた背中がちょっと痛い。滑り込むなんていつぶりだろ。久しぶりだな。


あっと。急いで、抱き締めている人が生きているか確かめる。えーっと…。取り合えず心臓に手を当てた。うん、動いてる。生きてる。良かった。

びっくりしたー、だって空から降ってきてたもん。まあ空で船が爆発していたから当たり前か。でも確かこの人、バーンて爆発した時より早く外に出てたよね。あんまりはっきり見てないから分からないけど。死にたくないから爆発する前に外に出たのに、それで死んだら意味ないよ。なんかそういうのってむなしくて悲しいから何となく助けた。


『ねー、生きてるー?あ、生きてたか。…ねー、気、失ってるのー?』



この人さっきからずっと目つぶったまんまだから、起こそうとしてみる。取り合えず平地を見つけて土に寝かせて、頬をペチペチと叩いた。あ、ごめん。ちょっと赤くなった。

男の人なんだ。一瞬女の子かとおもった。きれいな顔ー。しかも真っ黒な服ー。なんかゴワゴワしてる。動きにくそう。


てか助けてよかったのかな。また撃ったりする人だったらどうしよう。殺すしかないのかな。せっかく助けたのにな。そういえばこれ刀じゃん。うーわ、この人も私を捕まえるとかなんとか言うのかな。



「…………っ、」

『あ、起きた?気がついた?』



あ、目開いた。ちょっと赤い目。血の色?んなわけないか。

男の人は私の顔を見てパチパチと何度もまばたきをした。どうしたの?

そしたら自分の手を自分の顔の前に持ってきてグーパーを繰り返した。あはは、変なの。



「生、きてる……?」

『えー、生きてるけど?』



生きてる、だなんておかしいね。生きてないと目開けたり手動かしたりなんて出来ないんだよ。でもまあ目開けたまま死んでる時もあるけど。

そしたら次は私をジーって見てきた。なんか私の顔についてる?てかなんでそんな驚いた顔してるの?



「っ……、」

ザッ!

『あ、』



そしたら急に男の人が跳ねるように起きて飛び退いた。一気に私と男の人の間に距離が出来る。チャキ、と聞きなれたそして大嫌いな音がした。刀を抜く音。

失礼だな。私の顔を見て刀を構えるなんて。やっぱりか。つまらないな。私を捕まえるのかな。ちぇっ。


まあ、もうちょっと様子を見てみよう。



続く→


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