あ、また



コツコツ、と闇夜に響く音
薄暗い路地に響く音
時おり吹く冷たい風が、一陣の筋となって私の髪を揺らした。闇に溶け込む闇色の髪。同時にたなびく闇色の服。漆黒の仕事着。

いつものこと。変わったことなんてなくて、いつも、いつも、同じで、いつも、私が歩いている道、私が歩いている時間帯。

そしてそれを知っている、奴

足音が響く、私の、じゃなくて。
少し歩く歩幅を広げて速度も上げる。と、同時に軽やかに響く足音の二重奏。こんなに気分が悪くなるような音楽は普通なら味わえない。


ストーカー


世間一般常識の言語で表すとすればそう言うのだろう。表の世界の正義、海軍は何をしているのだろうか。こんなにか弱い少女が、世に言う極悪非道な海賊に、夜遅くまでつきまわされているというのに。しかも毎晩毎晩。いい加減止めてくれないだろうか。もう今日で一ヶ月は経つ。さすがにここまでしつこいと、鬱にでもなんにでもなるという話だ。

いっそのこと殺してしまおうか。

そんな考えがいつも浮かぶが、踏み留まる。違う。違うからだ。あくまでも私の仕事は、隠密に、確実に。ここで殺すことは簡単なのかもしれないがまだ情報が足りない。まだだ、まだ時は満ちていない。とりあえず今は、いつも通り、


逃げるか


タッ、っいう効果音を引き連れて足を回し風を切る。私の後ろに居る奴も足を回転させてついてこようとする、が。無理だ。んなの。
私はこれが生業であり仕事であり天職であるし。足の速さ、いや隠れ身ならこの世一だと自負している。
この脚力で私は一ヶ月間ずっと、奴を巻いてきた。

そしてそのまま、走っている勢いを生かして右隣の壁を駆け上がる。重力にも負けないその勢いは、やがて私を月光で照らしあげる。ふふふ、ざまあ見なさい。私をストーカーしようなんて、海賊だろうと何だろうと、バカな奴。
いつか、いつか、情報を更に集めたら、殺してやるから、覚悟しろ。ストーカー。









































グッ






















『あっ…』































































い、たい、


「…つかまえた」

『…ひ、』


喉奥から生理的に悲鳴が漏れ出た。咄嗟に身体中を稲妻のように駆け巡る、悪寒。自然と身震いがした。身震いが止まらなかった。
突然どこかから伸び出てきた誰かの腕、が、私の腕を掴んで、そして、
おそるおそる、徐々にではあるが、その伸びる腕を辿って目線を上に送れば


こちらを睨む漆黒の鋭い双眼、が確認出来た


嫌だ。

怖い。


先程まで“殺してやる”なんて言ってた威勢はなんだったのだろう。己の未熟さ、判断力の鈍さに対して蔑み、そして思わず身を傷つけそうになる。
きっと私をつけていたのはこの人なのだろう、か。壁を駆け上がった先にいたのは長身で長刀を持つ若き男。腕を掴む力は強く、その力は更に恐怖を煽らせる。
じゃあ、なに、この人は私と一緒に。否、私よりも早く駆け上がり、そして、待ち伏せをしていたのか。そして海賊でそして私をつけていてそして私を、


殺す気でいるのか


嫌だ。
死にたくない。

嫌、嫌だ。
い、やだ、嫌だ、嫌、嫌、い、や、こ、わい、怖、い、怖い、怖、い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い!!





























































「愛してる、佐奈」

























私が、彼の口から、次に聞いた、のは



































「だから、俺の手で、」

絶望だった




(私が愛されるまでの、)(私が殺されるまでの、)














――――――――――――

駄作すみません!orz≡ズシャァァッ
キリリクとしてポポ様に捧げます!

ヤンデレって難しい!
私のつたない文章力では表現しきれなかった事があるので軽く補足

まず主人公は闇の殺し屋的な仕事をしています。
頼まれたら情報を集めて隠密に殺す、的な
そして人外の脚力は先天的なもの

大体そんな感じです



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