もしそれが彼の本当の姿でなければ、と俺はふと考えた。
 印象的な面に覆われた目元。道化と言ってしまえば滑稽かもしれない。しかし他に綺麗にはまる言葉もないから、きっと彼はそう呼ばれるべきなんだろう。
 彼は笑みを絶やさない。だがそれは笑顔と呼べるほど格好のついたものではなかった。なんせ口元しか見えていないのだから。
 あの面の下の目はきらきらと輝いているかもしれないし、逆に鬱屈を溜め込んでいるのかもしれない。
 初めて会ったとき、彼はあの面をつけてはいなかった。それなのに記憶にあるのは、退屈を嫌うような口調と飛び抜けて明るい声だけだ。
 あの時確かに見たはずの顔はいつの間にか、現在の「あれ」にすり替わっていた。
「見たいの?」
 俺は答えなかった。分かり切っていることだ。
「まあ、僕は見せたくないけどね」
 秘密が彼を道化にしていく。どこまでも演じ続けている。本当の姿なのか、それとも。
 どちらにせよ、俺にはその下に隠されているものに少しの興味も持てなかった。
 俺は目を細める。これがお前の、顔。道化に栄誉を、王冠を。


本当は見せてって言われたい華吹とか

   
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