「だからこそ、そうだ。僕は愛されて然るべきだと思うんだよ。分かるかい鹿内くん!?」
 いやまったく分かりませんけどさ。どうでもいいけど然るべきとシカを掛けたんだったら殴る。それはもう徹底的に顔の形がサッカーボールレベルに肥大するまで殴る。あ、やっぱりどうでもよくねえわ。俺案外根に持つタイプなんだな。
「よしはっきり言っておく」
「いや、僕がイケメンなのは分かってるから! いいんだよわざわざそんなこと言わなくたっ」
「お前馬鹿だろ」
「どうしてそう思うんだい!」
 思われて然るべきなんだっつの。この率直すぎる意見は胸にしまっておくことにした。火に油を注ぐことは誰にでもあるちょっとしたうっかりかもしれないが、足下を浸すガソリンにめがけてわざわざマッチを落とすやつはいない。そういうことだ。
「いいだろう……僕が馬鹿じゃないってことを証明してあげるよ! 後で気が済むまでとことん悔やむがいいさ!」
 まあ誰もまさかマッチを擦った瞬間にガソリンが類を見ない跳躍で火に飛び入ってくるなんて想像しないだろう。そういうことだ。ちなみに今のはルイと類を掛けたわけじゃないということだけは言っておく。こっちのルイは見ないというか、もう見たくもない。
「はいはい分かりました。空野さんは馬鹿じゃないです。いいですこれで?」
「分かったならいいんだ」
 いやまったく分かってないですけどさ。そういうことにしておこう。
「はあ……中谷くん」
 気に入ったゲームは何周プレイしても物足りない俺だがこの展開はとうに見飽きていた。もしコントローラーがあったら顔面めがけて鼻から後頭部まで盛大に突き抜けるような勢いでぶん投げてやるのに。いや、この場合は目を伏せながら電源ボタンを押す方が賢いかもしれない。
「はあ……見てらんねえルイだなあ」
 愛されて然るべきか。よかったらこの俺が愛して差し上げますけど。なんて冗談だっつのおぞましい。
 記憶にある展開通りうなだれる頭を見る。イケメンなのにな。と滑る手前の唇を慌てて強く噛みしめた。


何だかんだで仲良くやる2人

   
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