可愛い服が好きなんだろなって思わせるくらいならよかったのに。違うみたい。兄ちゃんは普通とは違う。
黒とピンクの縞模様の靴下。少し焼けた足が伸びているのが短パンからならよかったのだけれど、確かにそれは下に向けて咲いた黒いスカートから生えていた。
俺たちは普通の兄弟だったのに。
兄ちゃんは風になびく裾を押さえながら、ただ俺を暗い瞳で見つめていた。
普通に戻れるのか確かめる方法はもうない。ひとつを除いて。
姉ちゃん。
ずっとそう呼ばれたかった、そう言ってうつ向いた姿を見て俺は初めて幻一を殴った。
(影二と幻一)