低い机を挟んで、ふたり。僕たちに課されたもの。夏が終わる日はそう遠くない。
「ねー、俺偉い?」
「何で」
「ほらぁ、課題自分でやってる! な!」
「うん……偉いね……」
 当たり前だからね、なんて言う必要はない。歯の隙間から笑い声を漏らす彼には分かっていることだ。去年の夏からずっと言い続けていること。
「髪邪魔じゃないの?」
「あー……うーん。くくる」
 そう言って影浦はクッキーの袋を留めていた輪ゴムで手早く髪をまとめ、また課題に向き直る。去年はどうだったか。
 そうだ、髪はまだ長くなかった。
「暑苦しいからね」
「もうくくりましたー」
 じきに夏が終わる。最後の夏が来るまで、君を嫌う理由を一つくらい残しておけばよかった。
(三重内と影浦)


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