ポケットに入れた携帯が震える。バイブのパターンで分かった。着信。
グラスから目を逸らさずに携帯を開き耳にあてる。
『観月、私だ』
「何よ。日食の話? 見てるわ。もうすぐピークみたいね」
『そっちが少し早いか』
「ええ」
影が重なった。まるで、言いかけて口をつぐんだ。
環から光がこぼれる。
「……指輪みたいねえ」
『こちらはまだだ』
「知ってるわ」
電話がぶちりと切れた。
ポケットに入れ直した携帯をまた取り出して握る。きっとまた、かかってくる。
(観月と栄西)
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